KCN-Netpressアーカイブス

人と心とふれあいと
Vol.19

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高橋成典さん
フルート奏者
高橋成典さん

深い音色と軽やかな心と
〜大フィル首席フルーティスト36年の歩みの上に〜


 東京で生まれ育った高橋さんは子どもの頃から音楽好きだったそうですが、父は工場の経営者で長男の高橋さんを後継者にするのは当然の事と考えていたとか。
中学生になって音楽部に入り、ピアノを弾き始めるものの、高校生の時ピアノの先生から「戦後平和になると幼い頃からピアノを習う子がたくさん出るから音楽をやるなら管楽器を」とアドバイスを受けたそうです。

 「当時、ラジオで名演奏家の時間という番組があって良く聴いていたんですが、ある日素晴らしい演奏が流れたんです。家を飛び出して、先生の所で今日聴いた笛を吹きたいと言ったんですね。先生が問い合わせて下さったら、フルートの神様と言われていたマルセル・モイーズの演奏だったんです。この時初めてフルートという楽器を知りました。日響、今のN響の吉田雅夫先生を紹介されたんですが、父に内緒で母が応援してくれました」

 高橋さんが忘れられないのはある日放送を聴きながら、「あれはオーボエでしょ」という母の一言。 「あれには参りました。本を買って勉強していたんですね。それに父も。父が居るときは音楽放送も聞かれず、練習もしていなかったのですが、夜中に駅から帰る時、1キロほど遠くからも僕のフルートが聞こえていたらしい。結局、東京芸大に入れるのならって許してくれました」

 1日10時間の練習をこなし、芸大を目指したことが高橋さんの大いなる基礎となりました。大学4年の時に東京交響楽団に入り、4年後に大阪フィルハーモニー首席フルーティストとして迎えられました。ベルリンへの留学で音楽への想いをさらに深め、生活の中での音楽の楽しみも改めて知ったそうです。最も印象的だったのは大フィルのベルリン公演。友人たちの温かくも厳しい耳へ精いっぱいの演奏を届けることができたとか。さまざまな大舞台から今はサロンコンサートが面 白いと気さくに出かけては名演奏で魅了、奈良と大阪、二つの家を行き来しながら初心者からアマチュアやプロまでの指導、コンクールの審査など多忙な日々です。深い音の中に軽やかな心が響き、いつまでも心に残ります。



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