KCN-Netpressアーカイブス

人と心とふれあいと
Vol.22


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多くの人が親しみを持てる東大寺に
東大寺管長 新藤晋海(しんどうしんかい)さん


「開かれた東大寺を」と話す新藤さん

 新世紀最初の管長を務める新藤さんは、聖武天皇誕生千三百年、修二会が行われて千二百五十回目、大仏開眼千二百五十年などさまざまな節目をその任期中に迎えるのだそうです。
昨年、急逝された上司前管長の後を引き受ける新藤さんに、お話を伺いました。

「僕は無難なんて考えないで、正しいと思うことを実行していきたいと思っています。勿論、ひとには好かれたいし、自尊心もある。しかし、やることはやるし、言うことは言う。そのために管長を引き受けたんですから。東大寺の常識と世間の常識は随分離れた所もあると思うんです。東大寺というだけで格式があるとか、偉いということはありませんから、ぼくは平身低頭しているんです。 寺はサービス産業、来て下さる方に気持ちよくして帰っていただく。 境内の雰囲気もそうあってほしいと思っています」

 昭和の大修理、ユネスコ音楽祭などこれまでも、陰に日なたにその実行力は周知の事。二月堂下の絵馬堂では、自ら掃除もうどん作りも行ってこられました。気さくで、豪快で、真っ直ぐな物の見方が話しの端々に感じられます。
  物事にとらわれない生き方は、名僧として知られる上司海雲さんの影響でしょうか。新藤さんは海雲さんの甥にあたり、15歳の時から教えを受けてきたそうです。そいうえば、壺法師と言われた海雲さんが志賀直哉から譲られたという李朝の白磁壺が観音院から盗まれた時、犯人と組み合った武勇伝は記憶に新しいところです。逃げる時に壺は投げつけられて粉々に割れてしまいました。

「破片は勿論、粉まで拾いましたが、復元は難しいだろうと思っていたら、びっくりするくらい元通りになりました。今は大阪中之島にある東洋陶磁美術館に納められています。すごい技術ですな」
世紀末から新世紀へ、奈良を代表する寺院の役割は、清々しく、親しみのある雰囲気づくり。脚下照顧して、自然のバランスの中で共に生きることを考えたいとのことです。その一環に給与を見直し、大仏殿で世界の芸能が繰り広げられる計画も立案中。手始めに大仏殿前での大盆踊りを開くとか。

「見るだけでなく参加できることを考えたい。落慶当時は東南アジア各国の最先端の芸能が奉納されたんですから。前例にこだわって閉じるのではなく開かれた東大寺にしていきたいですね」
  権威に強く、情には弱いという新藤さんならではの抱負とエピソード、時間の経つのを忘れて聞き入りました。



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