KCN-Netpressアーカイブス

人と心とふれあいと
Vol.23


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奈良晒に込められた技と心をを伝えたい
帝塚山大学短期大学部講師 澤田絹子さん

 住宅や小物、衣類にしても自然素材のものは、使っていて心地良く愛着も生まれます。何より使い込む良さは、自然のものならでは、といえるでしょう。春から夏にかけて、暖簾やテーブルまわりはもちろん、バッグ、衣類にと麻が活躍してくれます。奈良晒の名で江戸時代に欠かせない布として大変な生産を誇っていたようです。武士の裃は麻で作られ、奈良のものは上質で有名でした。絹織物にも匹敵するしなやかで艶やかな織りは、極細の糸がしっかり目をつめていて、御三家だけに許されたという茶屋染など、極致の染めを可能にしたのです。

 
今、奈良で糸を績む人も高齢化が進み、かつての布が幻になっています。そんな麻に魅せられて、麻の栽培から始める澤田さんにお話を伺いました。

「織物はどの工程も飛ばすことができないんです。積み上げていくというのが私には合っていたんでしょうね。何でもそうですけれど、物のまわりには、作る人、買う人、愛でる人っていろいろいますよね、私は作る側にいたいんです。その中で出会ったのが奈良晒。一生のテーマにしては大きすぎるんですが、その時々にいい人に会っては応援していただいて、どうにか先が見えるかな」

 沢田さんの直接の「育ての親」が植村和代文芸学科教授。織物を学問として構築した草分けの人です。植村先生のもとで澤田さんは麻に向かう日々を送ります。


大和機を復元し、麻を栽培して麻布を織る澤田さん。

「いいものを作りたいと思うといい材料が要ります。今、県内に残っている糸を績む人は明治41年生まれを頭に4〜5人しかいません。機もありませんでしたから、山に捨ててあった機を拾ってきて、個人的に織機の研究をされている方にお願いして復元に協力していただいたんです。大和機っていうんですが、普通の機より角度があって、これが美しい布を作り出すんです。織る姿もきれいだと思うのよ」

 織りの流れを知ろうと、麻の栽培も始めたそうです。手仕事の大変な部分を全部引き受けての作品作りは、きっと心まで織り込まれていくのでしょう。

「帝塚山短大にはいろんな染織にチャレンジする若い人がいて頼もしいですよ。その中から一人でも奈良晒に興味を持ってくれたら、と思っています」



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