KCN-Netpressアーカイブス

人と心とふれあいと
Vol.25


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書に表れるのは人の心
書家 杉岡華邨さん


 昨年8月奈良町の中に開館した奈良市杉岡華書道美術館。その秋には文化勲章を受章、日本を代表する書家として、日々研鑚を重ねる杉岡さんにお話をうかがいました。

 「私は山また山の村、下北山で育ったんです。川で魚獲ったりして遊んでばかり。お正月の書き初め展に私も書いたんですがね、父が下手だと言って鉛筆で頭を突いたんです。すると祖母が何するんだって父を怒ってましたな。そんなことを覚えています」

 杉岡さんが書道と本格的に取り組むようになったのは、師範学校を卒業後、高等師範学校への受験に失敗して、郷里の下北山村第一尋常小学校で習字の研究授業を命ぜられてから。

 「人生とは不思議なものです。もし、あの時高等師範学校に受かっていたら、今の私はありません。習字の研究授業から書道へ本格的に取り組み、26歳で師範学校や中学校の習字科教員免許、文検にも受かって女学校の教員になりました。戦後、大阪第一師範学校(後の大阪教育大学)へ誘われましたが、食料難の時代に奈良から大阪へ職場を移すことに悩みました。
「芋や葉っぱで人生を誤りなはんなや」との先輩の言葉で転職を決意したんです」


地図

 書道人生は一層深まり、京都大学へ無届聴講までして、平安朝文学や美学美術史、中国文学を学んだそうです。そして「あなたの熱意に感銘を受けたと言って学長が二年間の内地留学を認めてくれ正式に学ぶことができました。 ひとつのことを学ぶと周辺のことへと広がるでしょ、そうするとまた疑問が出る。それで禅学者の門も叩いたんですよ。非常に感動しましたね。勉強は書物だけではだめです。偉い人と直に会って話すことが大切です。そして自分を開発するのは自分自身。人としての内容、思想、宗教といった心が書には表れるんです。心の無い字はいくらうまくてもいけません」

 杉岡さんはライフワークとして「源氏物語にあらわれた書」を執筆中。書家から見た源氏物語はどんな世界を見せてくれるのでしょうか。



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