7月は文月、七夕月とも呼ばれます。文月の呼び名は七夕に詩文を作るところからとか、草木の実の熟するはふくみ月が略されたのだともいいます。この月には梅雨が明け、いよいよ夏がやってきます。約ひと月にわたって続いた梅雨は平均すると7月11、12日頃に明けるようです。猛暑、炎天という厳しい夏がやってくるのですが、誰もが気象庁の梅雨明け宣言を心待ちにしているのは、うっとうしい雨を厭うからでしょうか。この湿潤な季節は、稲作に欠かせない大切な恵みでもありますが、梅雨末期の激しい雨による出水はまた心配なものです。春夏秋冬の四季にくわえて梅雨の季を加えて“五季”という人もいますが、それもなるほどと思わせるくらい梅雨の存在は大きいものです。それだけに梅雨が明けて、青い空と輝く太陽は何ともいえない爽快感と安堵感を味わうのでしょうね。
7月は気候の変わり目の月。2日は半夏生、7日の七夕が小暑で23日は最も暑くなるという大暑。そして27日はいよいよ土用の丑の日。梅雨明けから一気に夏の暑さが襲ってくるようです。
半夏生とは七二候のひとつです。七二候とは1年を5日ずつ72に分け、そのひとつ一つに時節の特色を示す自然現象を割り当てたもの。夏至から数えて11日目にあたります。この頃になると農家では農作業が一段落する頃で、半夏生餅やさなぶり餅をいただく風習があったようです。ドクダミ科の多年草の片白草はこの頃に葉が白くなるので半夏生、半夏草、半化粧などと呼ばれます。
7月の花といえばやはり蓮でしょうか。そして、奈良の蓮といえばやはり唐招提寺。唐招提寺と蓮のつながりが古く、鑑真和上が青蓮の実を持って来日したのだといわれています。以来、数多くの蓮が育てられ、見事な花を咲かせています。1951年、故大賀一郎博士が千葉県検見川の土中から見つけた2000年前の蓮の実を発芽させることに成功、大きな話題となった大賀蓮や門外不出と言われる孫文蓮などとりどりの蓮の花が夢のように開きます。厳しい律宗を伝える質実な寺院の見事な華やぎ。
蓮は食用に祈りの場にと古くから人々の暮らしの中で愛されてきました。正倉院の御物や古代瓦の文様としても数多く残り、万葉集にはハチスの名で歌われています。ハチスは蓮の花托が蜂の巣に似ているところからの呼び名で、仏教ではこの部分を仏様の台座に見立てます。インドでは葉を団扇にしたり、裏面に爪で文字を書いて紙の代わりにしたり、発熱した体に巻く湿布にも使っていたようです。古代エジプトでは生命再生の象徴としてミイラに飾ったり、航海へ出る船や葬儀での献花として使われていたとか。
花が閉じる頃にお茶の葉を和紙に包んだものを乗せ、一晩花の中に置いたものを取り出してお茶としていただいたことがありますが、馥郁とした蓮の香りが立って、心まで洗われるようでした。今年も蓮のお茶がいただける機会があるといいのだけれど。
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