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 時雨月、初霜月、良月、そして神無月。10月は日本中の神々が出雲にお集まりになるといいます。だから出雲では神有月とか。八百万の神々が集ってさてどんなお話が弾むやら。大和の神々もご不在ではありますが、神社の行事は粛々として執り行われます。生駒市壱分町、生駒山麓のこんもりと茂る森に抱かれるように建つ往馬大社での火祭りもそのひとつ。勇壮で優雅、しかも不思議な魅力のある祭りには多くの人々が訪れるようです火祭りというと何やら血が騒ぐ勇ましいものが多いのですが、さすが奈良大和。ただ勇壮なだけではなく優雅な雰囲気が漂っているのです。

 さて、この往馬大社の歴史は古く、「総国風土記」には創建が雄略3年(5世紀中頃)と書かれ、正倉院文書にも出てくるというほどです。祭神の伊古麻都比古神(いこまつひこのかみ)と伊古麻都比賣神(いこまつひめのかみ)は火を司る神で、歴代天皇の即位時に用いられる火燧木(ひきりぎ)を献上してきたといいます。

 境内には高床式の座という建物に囲まれた広場がありますが、火祭りの舞台はここ。地元では上座と下座の二つの座を組織して互いに競いあいながら祭りの行事が繰り広げられていきます。10月10日が宵宮で本番は1日。この日は午前中に宮司を中心とした例祭があり、午後一字過ぎからクライマックスへむかって雰囲気がり上げられていきます。

 4つの神輿(みこし)が広場に運ばれ、高座に収まると上座と下座が競って神餞(しんせん)を供えるのです。ハギで編んだ器にはもち米を蒸した“しらむし”、盆には鏡餅があるのですが、駆けていくので見ているとはらはらしてしまいます。その後祝詞や奉幣、剣の舞、海老舞とゆるやかに典雅な式次第が進んでいくのです。そしていよいよ火祭り。

 点火された二つの大松明は先を競って石段を下り、広場に置かれたススキの穂を束ねたものに火を移します。火は一瞬に燃え上がり、炎の塊はぱちぱちと爆(は)ぜながら境内を去ってしまうのですが、その間約数秒。あっという間のできごとです。

 勇壮で優雅で、あっけない幕切れにお菓子味さえ感じられる不思議な祭り。気が付くと境内には山の冷気がしのびよっていて、深まり行く秋をしみじみ感じるのです。奈良にはたくさんの祭りや法会があって、案外知られてはいませんが歴史を思わせるこの祭り、一度は参加しては如何でしょう。出雲に集った神様方もきっと拍手喝采してくださるのではないかしら。火祭りだけにやはり良く晴れたお天気に恵まれますように。変わりやすい秋の日であっても。

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10 月 神無月
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メールにもちょっと時候の挨拶
「夕暮れが早くなって、気持ちが急かされます。秋の夜長、ちょっと手紙を書きたくなってペンを執りました。」
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「涼しい夏、酷い残暑。秋は爽やかになって欲しいものです。こんな異常気象になると夏は暑く、秋は涼しくといつもと同じことが大切だと実感しますね。」
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「北から南へ、山から里へと秋が絵筆をふるっていきます。今年の紅葉はどんな具合でしょう。見慣れた山もこの季節には見直してしまいます。」
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「鍋ものが恋しい季節です。近いうちに鍋を囲んで集まりましょう。割り当て無しで鍋の材料持ち寄りで。白菜だけになったりしてね。」
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「朝夕はすっかり冷え込んで、起きるのが辛いこと。今からこうでは冬が思いやられます。なのに日中は暑い。何を着たらいいのやら。ブティックのショーウィンドーが気になります。」