4月は卯月、卯花月、花残月、清和月、鳥月とも呼ばれます。卯月や卯花月は卯の花が咲く頃からということでしょう。平安時代、女性の衣の襲(かさね)にも卯の花があります。表を白、裏が萌葱でこの色目は4月に装っていたとか。花残月は桜が咲き残るというイメージでしょうか。清和月というのは空が晴て清らかに暖かいことを清和ということからの呼び名です。晴れて清らかだけなら秋になりそうですが、暖かいが加わるとやはり春4月なのでしょう。
今年の春は激しい行きつ戻りつを繰り返し、北海道と沖縄を行ったり来たりしているような感じでした。前日24度、次の日4度、なんと1日で20度も差があるとは、体も着るものも戸惑ってしまいます。桜の開花を迎えての冷たさで咲きかけた花もそのまま足踏みしてしまいました。4月まで咲き残る桜はどれほどあるでしょうか。吉野なら下千本から咲き上って、西行庵の奥千本まで約1カ月を要しますからまだまだ楽しめそうですね。4月は花開く月。開くと言う言葉にはさまざまな意味を含みます。花開く、戸を開くはああ当たり前として、幸運の女神に微笑まれると運が開くし、文明も、商いも開くを使います。胸襟を開けば人との距離がなくなり、同じバックでもブランド品と無印では値段に相当な開きがあります。荒れ地を耕すのも開くなら楽しい集まりにも必ずお開きの時がきます。悩みが無くなれば愁眉を開くし、人情に通事、道理をわきまえた人を開けた人といいます。花も心も開く4月に乾杯!したいものです。
乾杯といえば、お酒や水を錫の器に入れておくとまろやかにおいしくなるといいますね。錫は紀元前1500年といいますから今から3500年も前、エジプトでは酒器が使われていたそうです。錫は銀に似た美しい光沢があり、融点が230度と低いことから細工もしやすく、昔から使われていたようです。日本では奈良時代に中国から伝えられ、正倉院にも何点かが収蔵されています。昔、井戸を掘った時に錫の板を入れて味を良くしていたこともあるとか。どうしてなのかは知りませんが、昔から言い伝えられてきたのですから、何かの理由はきっとあるのでしょう。いずれにしてもどこかやさしい手触りの錫の酒器で春の晩酌を楽しもうかしら。
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