5月といえば連休。4月の中頃から仕事も遊びもさまざまに予定を立てます。ヨーロッパでは6月や7月が一番美しい季節だというが日本ではやはり5月でしょう。木々の緑は風に揺れて金色や銀色に輝いて見えます。新緑の美しさは一年の中で最高。枝葉も草花もぐんぐん伸びて、気持ちがいいほどです。日脚だって延びて、一日が長くなって得した気分になるのもこの季節。牡丹、石楠花、躑躅、杜若など初夏を彩る花に溢れる5月の風景の中に鯉のぼりが悠々と泳ぐのを見ると、男の子のいる家だと分かります。広い庭に高々と掲げられる鯉のぼりも、ベランダにちょこんと泳ぐ手作りの鯉のぼりも大小にかかわらず、子供への思いが微笑ましく、つい立ち止まって見上げてしまいますが、最近は少子化の影響でしょうか、少なくなった気がするのですが・・・。
5月5日は端午の節句。“端”とは初という意味ですから“端午”とは月の初めの午の日のこと。中国では古くら5月の午の日を悪日と考え、邪気を払うためにいろいろな行事を行ったようです。中国では魏の頃に午の日を5日に変えたそうで、日本へ伝えられたのも端午は5月5日。以来、年中行事のひとつとして節会の行事が行われてきました。
宮中では御殿内に菖蒲を飾り、天皇は菖蒲鬘(あやめのかつら)を冠にかけて武徳殿へと行幸されます。殿上人たちも同じように菖蒲鬘をかけての参上となるのです。菖蒲と蓬を盛った輿が献上され、麝香や丁字などの香料を入れた錦の袋に菖蒲や蓬を結わえ、五色の糸を長く垂らした薬玉が臣下へ与えられ、やがて優雅な宴が開かれるのです。
菖蒲は香りが強く、葉の形が剣を思わせるところから邪を払う力を持つとされています。薬玉は帳などに掛けてその匂いを楽しむと共に邪気を払ったのです。旧暦の5月といえば、暑さも極まる頃。夏の疫病を払う重要な行事だったのでしょうね。菖蒲や蓬、さまざまな香料は今のアロマテラピー、自然の摂理の中で上手に気分転換をはかっていたのかも知れません。端午の節句には、競馬(くらべうま)や流鏑馬なども行われましたが、これは中国で行われていた薬狩りの名残といわれています。中国では薬草のほか、熊の肝など動物も薬として使いましたから、薬狩りという狩りが行われていたのですが、日本では仏教思想の影響で殺生を嫌ったので宮中の馬場で、狩りではなく武術の鍛錬として行われたと言われています。武士の時代となってからは、典雅な節会よりも菖蒲が尚武につながることなどしだいに武勇を尊ぶようになり、男の子のまつりになったようです。
花菖蒲を飾り、粽や柏餅食べて、さて、どこへ出かけましょうか。帰ったら菖蒲湯に浸かって疲れを取ることにして。
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