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暮らしの歳時記 笠 荒神そば畑
9月/長月

 長月、菊月、紅葉月とも呼ばれる9月はまだ残暑も厳しい時節です。暦の上では9月7日が野原に露を宿し、虫の音が聞こえてくるという“白露”、23日が秋分の日と着実に秋を迎える月でもあります。短夜から夜長への折り返しの時に先祖を供養する習わしがあるというのも日本人らしい深い心の表れでしょうか。平安時代初期にはすでにこの頃、宮廷では先祖を供養していたようです。江戸時代になって庶民の間でも行われるようになっていきました。

 友人が自分を真ん中に置き、両親、祖父母、曽祖父母と家計図のように書いていくとたった5代遡るだけで62人の先祖がいることがわかって驚いたと話していました。それからさらに名前も何も分からない点だけの先祖を書いていくと孔雀の羽を広げたようになって感動したそうです。自分の命が生まれるためにはこんなに膨大な先祖たちの命の積み重ねがあったとは、と言うのです。しかも、その中でたった一人でも欠けていると、今の自分はいないのですから。命というのは本当に不思議なめぐり合わせの賜物なのですね。その友人はそれ以来、折に触れてご先祖への感謝をすることにしたそうです。日ごろは忘れていてもお盆やお彼岸などには先祖のことに思いを馳せてみるのも大切なことなのかも知れません。

 お彼岸は中国から伝えられた二十四節気に日本のものを補った雑節のひとつで春分、秋分をはさむ前後7日間のことをいいます。ただお彼岸といえば春のお彼岸のことをさしますから9月は秋彼岸ということになります。9月20日が彼岸の入り、23日は彼岸の中日、最後の26日を彼岸明けと呼んで、お墓参りに出かけたり、お寺での供養に参加したりして過ごしてきました。暑さ寒さも彼岸までと季節の区切りの時でもありますね。

 この頃実った田圃を縁取るように咲くのが彼岸花。真っ赤に燃えるように咲く花は天上の花という意味の曼珠沙華とも呼ばれます。また、逆に死人花とも言い縁起が悪いと嫌われてもいたのです。王冠のように繊細で美しい花は根に毒を持っているところから、両極端の名前を与えられたのでしょうか。でも毒のある根はでんぷん質に富むところから、飢饉の時には何度も晒して毒を流し、食用にもしていたそうです。田の縁を守るかのように咲く赤い花は幾時代にもわたる、先祖の深い祈りの色なのかも知れません。だからやはりお彼岸にはきっかり咲いてくれるのですね。

 花といえば、9月にはそばの花が咲きます。桜井市の笠地区では10年ほど前からそばの栽培が行われるようになり、今ではすっかりそばの里として知られるようになっています。三輪山の裾野から深い木立に囲まれた林道を車で20分ほども走ると“笠そば”に出ます。目標は笠山三宝荒神。笠の荒神さんといえば日本三大荒神のひとつとして三千年の歴史を持つ古い由緒の神社です。初めて火を用いた土祖神(ハニオヤノカミ)、興津彦命(オキツヒコノミコト)、興津姫神(オキツヒメノミコト)の三神を祀るかまど(台所)の神様の向かいに笠地区の人々の手で栽培されたそばを地域の人々の手で打ったそばがいただけるそば処が建っています。そば処の建築は国の援助を受け、地域の活性化のために力を合わせて実現し、運営はもちろん地域の人々によって。地域の活性化が目的だから、利益が目的ではなく、おいしいそばを中心に人々が集い、交流し、運営が成り立つことが何よりも大切なことなのだとか。だからざるそば400円也ということができるのですね。そばつゆの醤油は室生村のもの、昆布や鰹節はさまざまに試して決めたというこだわりを守りながらおいしいそば作りへ情熱を傾けています。

 9月中旬、このそば処の窓からは一面のそばの花を見ることができます。開けた畑の向こうには杉林、遠くには秋の空。そばをいただきながら、この風景は何とも贅沢なしつらいです。この花から実った新そばは12月頃からいただけるとか。この秋、ちょっと足を伸ばしてそば畑まで出かけてみては如何でしょう。そうそう、そばと共に地元でできる農産物も販売していてこれも大好評だそうです。そばよりこちら目当ての人もいるほどだとか。
やはり行かなくては・・・。

* 笠そば
営業時間:10時〜16時、定休日:水曜休み
電話:0744-48-8410 住所:桜井市笠4408

秋の蝉
新涼
芙蓉
芋嵐
メールにもちょっと時候のあいさつ
今年の夏は異常な暑さで、その後は台風続き、どうなっているのでしょうね。おだやかな秋になってほしいものです。
ガレージの隅に蝉の骸がころがっていました。何か無常な感じです。こんな時に詩人なら詩を作り、作曲家なら曲を作るのかしら。
朝夕涼しくなると、秋物のファッションに目が誘われます。季節の移り目ってほんと、困るのよね。
今年の夏は暑いし、オリンピックはあるしで旅行にも行かず、家ですごしてしまいました。秋、どこか行こうかしら。一緒にどう?
9月って何か慌しい月だと思いませんか。まだ暑いのに真夏のものを着たり、夏のバッグを持つと季節に乗り遅れた感じがするでしょう。そんな風に身の回りを片付けたり、お月見やお彼岸だと思っている間に過ぎてしまうのよね。秋の日はつるべ落としって言うけど9月もそんな感じがします。今年はそんな9月にならないように心を引き締めましょう。
彼岸花の咲く頃、葛城古道を歩きませんか。写真で見るととてもきれいだったので。歴史も少しは調べると面白そう。
9月と聞くだけで秋だなって思いますね。空の雲なんかすっかり秋めいて、ちょっと淋しい感じです。夏から秋への変わり目ってお祭りの後のような気分なのは私だけかなあ。

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