KCN-Netpressアーカイブス
取材:1998年10月
HARUHIKI NUKURA
1954年 神奈川県生まれ。
奈良市在住
職人としての技術と作家としての創造性を兼ねそなえたガラス芸術作家。
大学卒業後ガラスの世界を歩み続け現在に至る。
生み出される作品は国内外共に評価が高い。
日本ガラス工芸協会会員 
奈良市美術家協会会員
  「美しくて、冷たくて、それでいて中身が見え透いている貴女へ」と書かれたカードに添えられていたのは見事なボヘミアングラス。一読した女性は思いっきり投げつけてそのグラスを割ってしまうというのは、何という小説の場面だったでしょうか。ガラスの特質を利用した印象的なシーンとして覚えているのですが、ガラスにはもっと幅の広い魅力があるようです。新倉晴比古さんの手になると、ガラスもふくよかでやさしく、温かく感じられるから不思議です。
アーティストには魅力の素材
 ガラスのアーティストといえば、ガレ、ティファニー、ラリックなどがまずは思い浮かびます。でも、彼らは自分で実際にガラスを吹いたり、削ったりという作業はしていないのだそうです。ガラス制作には大がかりな設備と多くの人手が要りますから、資本力が無ければオーナーにはなれなかったとか。デザイナーとして、オーナーとして、多くの職人を抱えて始めて、自分のイメージ通りの作品ができたようです。
  ピカソやマティスもガラスを表現手段として使っていますが、技術を持つマイスターとのコラボレーションで作ったのだそうです。ガラスというのはアーティストにとって、魅力的な素材といえます。制作の途中は、決して手を触れることができないのですから。この不思議な素材を作家が自分の手で作り出すことができるようになったのは、スタジオガラスという方法ができてから。まだ、30年ほどの歴史といいますから、新しいジャンルといえそうです。日本でも最大級の規模という新倉さんの工房を、奈良市出屋敷町に訪ねました。
「マイスターとの共同製作という方法は、それなりの魅力があります。年齢的にいえば体力が衰えたら、その方向も考えないわけではありませんが、今までやってきたのは、全てを自分の手で作るというやり方です」

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