KCN-Netpressアーカイブス
  「ガラスと言うと、一般的には冷たくて、鋭利というイメージを持たれていると思うのですが、僕には熱くてやわらかい、生き物なんです。木や土は自然に存在しますが、ガラスは人工的に作らないと存在しない素材なんですね。それに液体と個体で質量が変わりませんし、熱しても気体にはならない。つまり、液体と個体で質量に変わりがないんです。このようにガラスにはいろんな特徴がありますが、最も大きなことは透明で光を透すということでしょうね。魅力といえば、特徴が全て魅力ということになりますね、直接触れないというもどかしさも含めて」
  工房には、1300度、1400度で真っ赤に燃える大きな溶解炉が2基並び、熱気で顔が火照るほど。
  「息を吹き込むという行為が生き物を触っているという感じなんです。しかも、生きている間が短い。吹くのは一瞬の判断なんだけど、偶発性ではありません。技術の裏付け、こういうものを作りたいという意志があって作品になるのだと思っています」 感性とテクニックが結びついて生まれる新倉さんの作品は、やさしい色づかいとやわらかな曲線で何ともいえない風合いがあります。温もりと共にしっとりとした湿度さえ感じます。独特の中間色は、欧米の作家が出せない色として注目を集めています。
  「器はやさしくて、強くないといけないのではないでしょうか。小さなものでも迫力を秘めているというようなね。僕は、日本のガラス文化を作りたいと思っているんです。花鳥風月、雪月花など日本の美意識に根ざしたガラスのありようを世界にアピールしていきたいし、自分の中にある日本的なものが作品に息づいてほしいですね」
  炉の熱気と作り手の熱い思いが作り出す作品の典雅で華麗なこと。見ていると、ガラスが液体だった時の記憶が封じ込められているような気がします。

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