大日岳と山ツツジ
千手滝
第8話:釈迦ヶ岳から前鬼へ
深仙宿  釈迦ヶ岳から深仙宿まではくだり坂が続く道。登りよりも下りの方が足を痛めやすいといいます。ここは毎年足を痛める人が出る難所としても知られる所。足に豆などができると痛さにかばってしまうのですが、これが膝や腰を痛める原因になるのだとか。足の痛みは痛みとして受け入れ、通常の歩き方をする方が結局は楽なのだとか。こんな話を聞くだけで、修験の行の厳しさが窺われます。
 深仙では採燈大護摩を焚いて法要が行われます。山中での護摩法要は一層厳かな雰囲気になるようで、修験者の中には黄金の中に包まれていると感じるなど不思議体験する方も多いとか。
 奥駈の道には孔雀のカクシ水、行者のカクシ水、香精水などの水場があります。毎日険しい山を歩くのですから、水を携帯するには限度があります。できるだけ身軽にすると喉が渇き、ペットボトルを十分に用意すれば水の重さに耐えられなくなるのです。水場はオアシスそのもの。その美味しさは甘露だとか。毎年奥駈に参加するという会社の社長さんは、「お金が何の役にも立たない世界があることを確認するために来る」と話していました。お金が役に立たない世界を知っている経営者とはどんな経営をするのでしょう。興味のあるところです。
大日岳 深仙宿から少し行くと大日岳。頂上に大日如来を祀る嶺は大峯奥駈の中で最も険峻な鎖場修行の地だったといいます。阪神大震災で岩盤が崩れてからは遥拝するだけとなりました。大日岳を下ると奥駈道の分岐となる太古の辻に出ます。南へ行けば持経宿から行仙岳へ向かいますが、現在の奥駈修行ではこれまた急な坂を下って前鬼山へ向かうのが一般的のようです。

前鬼山の伝説
前鬼山  前鬼山は役行者の弟子だった前鬼・後鬼夫婦に「後世の大峯修行者のために、この地にとどまりて子孫の計を建て、峰中を守護し、修行者を誘導せよ」と言い残したと伝えられ、その子孫が住み継いできたのだそうです。五鬼継、五鬼上、五鬼童、五鬼熊、五鬼助の五家が連綿として山中に住み継いだとか。明治に神仏分離令と共に修験道廃止令が出てからはただ五鬼助家だけが小仲坊を守って残っているのです。この日は前鬼の坊舎を宿にして身体を休めます。
  翌朝は午前3時に起床し、前鬼の裏行場へ。前鬼裏行場この行場の厳しさは山上ガ岳に比べられます。不動、馬頭、千手の三重滝などの霊場では健脚の修行者だけで参加するグループも多いようです。体調の良くない人や足に自信のない人は小仲坊での行となります。
  奥駈では前鬼山からを南奥駈と呼んでいます。かつては奥駈道といえば、熊野までを一度に踏破していましたが、今では一部の寺院を除いて前鬼山までで終えることが多くなっているようです。釈迦より南奥駈今回は聖護院がかつての道程でも修行をすることになり、松井さんもこれに同行しました。はるか本宮を目指してまだまだ修験の道は続きます。
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大峯奥駈道を行く 「第8回 釈迦ヶ岳から前鬼へ」
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