第6回
  舟の垰で勤行を済ませて歩き、七面山遥拝所を経て楊子宿へ。七面山は修験の道で登ることはありませんが、その荒々しい姿は山岳愛好家にとって憧れでもあるようです。異界を思わせるほどの光景と高原楽園が同居する魅惑の山とか。宇無ノ川に切れ落ちる鋭い岩壁がそそり立つ一方、草原が美しいアケボノ平もあり、大峰の秘境とも称えられています。
その山が一番見通せるのが楊子宿です。
  辛い修験の行を慰めてくれるのはこうした風景なのかもしれませんね。最も、極限まで疲れてしまったら、風景どころではないでしょうが。仏生ヶ岳を越え、孔雀岳に着くと勤行の後、十六羅漢の遥拝です。奥駈道の左手に林立する奇岩群はさながら羅漢さんが並んで立っているようです。羅漢とは阿羅漢のことで仏教修行の最高段階に達した人という意味だそうです。修験を励む人々はこの岩に羅漢の姿を重ね、修行の心を新たにしたのでしょう。
孔雀岳から釈迦ヶ岳方面へ
歩くと両部分けに着きます。岩壁には裂け目があり、吉野からここまでを金剛界、裂け目から熊野までを胎蔵界と呼び、曼荼羅世界の境の地。やがて、峰中随一の絶景と呼ばれるえん(掾の木偏)の鼻に出ます。
もちろんここでも勤行です。こんな光景の中で勤行するというのが修験者の醍醐味なのでしょうか。空鉢岳、杖捨て、馬の背、念仏橋など行けども、行けどもの難所が続き、お互いに助け合いながらひたすら前へと進みます。
やがて、釈迦ヶ岳の急な坂に出ます。山頂には伝説になった強力岡田雅行が単身で担ぎ上げたという釈迦如来が一行を向かえます。自分の身一つでさえやっとなのにこれだけの荷物を担ってここまで来る強力とはどんな人だったのでしょう。
  釈迦ヶ岳は標高1800メートル、大峯山中随一の名山として知られています。釈迦の名をいただくにふさわしい祈りの山です。
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大峯奥駈道を行く 「第7回 七面山から釈迦が岳へ」
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