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シェフ/大西佳則
Yoshinori Ohnishi |
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「ハイ、ありがとうございます。レストランめしあがれでございます。」
電話にでて、第一声のこの言葉にもすっかり慣れて、定着してきた私ですが、「どうして店の名前がめしあがれなのか知ってるか?」とのシェフの問いに、今更ながら「ん?どうして・・・ですか?」と、とぼけた声で聞き返してしまいました。
実は最初は‘Bon appetit’(ボナペティ)だったんです。お店の名前。
「フーン、さぞかし前々から心の中で大事に温めてきた名前なのだろう。」と思っていたら、なんとオープンぎりぎりまで名前が決まっていなかった!!なんてエピソードがあったのでした。
しかもシェフときたら、名前なんてどうでもいい。なくたっていい。と真面目に思っていたとか。
「ほんとかしら。」って思っちゃいませんか。
でもでもオープンまではすっかり本人は忘れてしまっていたらしいのですが、フランスでの修行時代、仲間達と「独立して自分の店を持ったら、どんな名前にするか」と話に花を咲かせていた頃、若き希望に満ちたシェフは、目をかがやかせ(ていたどうか?)「オレは‘Bon appetit’にする。」と断言していたのです。
それは「食い物屋」だと誰もが分かってくれると思ったから。
さてさて、そんな若かりし頃の夢の話などすっかり忘れ、オープン前の忙しさで頭はいっぱい。
そんな時に、力強い助っ人が。フランス修行時代の先輩が、大変だろうからと、手伝いに来て下さったのです。
ところが店に来るなり一言、「なんだ!おまえ、まだ店の名前決まってないのかヨ!!昔言ってたじゃないかヨ‘Bon appetit’にする!って。」この言葉に、シェフの頭の中では稲妻が走り、昔の記憶がよみがえり・・・ってな訳で、・
‘あっ、そうだった!’・「Bon appetitにします。」と答えたとか。
なんて単純なシェフ。いや・・・
ところがやっと決まったこの名前には、1つの問題があったのです。それは・・・
魚を買いつけに行く市場のおじさん達が、なかなか名前を覚えてくれない事。
炉ばた焼きのお店を営んでいるお兄さんの注告もあり、もっと分かり易くて誰でもす
ぐに覚えてくれそうな名前に変えることになりました。
Bon appetitを日本語にしてめしあがれ
そんなこんなでめでたくお店の名前は‘めしあがれ’となり、おかげさまで、今年で
10年目に入りました。
ただ1つここにも問題が。10年目に入った今だに、電話帳にはお店の電話番号が
2件も登録されているのです。
‘Bon appetit’と‘めしあがれ’で。 皆さん、紛らわしくって、ごめんない。
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