ポリカーボネート製食器と塩ビ製玩具


E001

ご質問

子供の離乳食用のスプーンの表示を見て、ふと気になりました。「ポリカーボネート」と「ポリプロピレン」の2種類があります。赤ちゃん用のコップも同様です。「ほ乳瓶や歯固めなどの、乳幼児用品に潜む危険」を読んで心配になりました。歯固めもそうですが、おもちゃは全部上の子のお下がりです。でも材質が表示していないものがほとんどです。フタル酸エステルを含有しているかどうか、私には判断できません。どうすればよいでしょうか。

 

 

回答

食器と玩具に関していえば、食器ではポリカーボネート樹脂から溶出されるビスフェノールA、玩具では軟質塩ビ樹脂に含まれるフタル酸エステルとビスフェノールAが環境ホルモンの疑いのある化学物質として取り上げられています。ポリプロピレン樹脂は現在のところ、環境ホルモンに該当する化学物質はないと考えられています。

 

<ビスフェノールA>

神奈川県環境農政部が行った、繰り返し使用におけるポリカーボネート製ほ乳瓶の溶出試験の測定結果によると、新品、使用品ともに0.30.5ppbの微量のビスフェノールAが検出されています。(食器で0.14.7ppb)。またこの結果は、ある程度使用した後の方が、検出率が高くなっています。 

動物実験で生殖系への影響などが報告されていますが、人体への影響については、全くと言ってよいほどわかっていません。また動物実験の結果から生体蓄積性が低いと考えられるので、尿や便とともに排泄されやすいと考えられます。 

現在のところ、数ppb程度の微量のビスフェノールAによる影響はわかりません。各国で現在、継続して評価が行われている状況です。 

<フタル酸エステル>

軟質塩化ビニルに可塑剤(プラスティック樹脂を軟らかくする材料)として含まれているフタル酸エステル類や、安定剤(光や熱で材質が変化しないようにする材料)として使用されているビスフェノールAは、実験によれば極微量溶出することが分かっています。現在、オーストリアでは今年7月から、3才未満の幼児を対象とした玩具にフタル酸エステル類を使用することを禁止しており、オランダ、ベルギー、デンマークでも自主的に避けるよう国がメーカーに要請しています。また日本の玩具業界によれば、日本製品の場合、おしゃぶり、歯固めには塩ビが使われているものはないとコメントしています。 

ビスフェノールAと同様に、動物実験で生殖系への影響などが報告されていますが、人体への影響については、十分にわかっていません。また動物実験の結果から、尿や便とともに排泄されやすいが、フタル酸エステルは脂肪に溶けやすいので、脂肪に溶解した場合、脂肪中への残留性は高いと考えられています。 

 

現在のところ、この2つの化学物質は、食器や玩具から溶出することがわかっていますが、人体への影響はよくわかっていません。各国で現在、継続して評価が行われている状況です。 

人体への影響が十分にわかっていないため、ビスフェノールAとフタル酸エステルに関しては、日本国内で規制が行われていません。 

しかし動物実験での影響や海外の動向などから、「事前予防」のために学校の食器などを自主的に陶器製に切り替えていますが、このような観点が現在の環境ホルモン問題には重要だと私は思います。環境衛生や環境毒性では、「事前予防」が重要視されています。1960年代に使われた女性ホルモン剤のDESは、安全と考えられ多くの方々が使用しましたが、後にヒトの生殖系に影響があることが判明し、妊娠中にDESを服用した母親から生まれた子供は、生殖系への異常などが確認され、その後使用禁止となりました。この教訓からも「事前予防」が大事です。

人体への影響については十分にわかっていないので、これまでポリカーボネート性ほ乳瓶や食器を使い、塩ビ製玩具を使ってきたことに対して、過度に心配しなくて良いと思います。すでに多くの方々が同じ状況にあり、私もそうです。それよりも、今後の「事前予防」を考えることが大切だと思います。 


Q&A集へ

「住まいの科学情報センター」のメインサイトへ