CCA防腐処理木材の使用規制


200248

CSN #232

2001125日、欧州委員会(EC)は、ヒ素を含む木材防腐処理剤の使用禁止を提案しました[1]。この提案は、欧州委員会企業総局(European Commission Enterprise Directorate General)が最新の科学的知見に基づいてリスクアセスメントを行い、次の懸念事項を得たことに起因しています。

1)    運動場の施設において、CCA(銅、クロム、ヒ素)防腐処理木材による子供の健康への影響

2)    家庭内暖房において、CCA防腐処理木材を管理せずに使用することによって、著しく増加した肺がんリスク

3)    CCA防腐処理木材を管理せずに焼却・廃棄することによって生じる重大な環境への影響

4)    CCA防腐処理木材の使用をコントロールした場合においても、肺がんリスクがわずかに増加

5)    CCA防腐処理木材から浸み出すヒ素によって生じる、低リン酸塩海域における水生生物への影響

6)    特別廃棄物処分場において、予測不可能な長期にわたるヒ素の浸み出し挙動からの潜在リスク

今回の提案は、EC指令1976/769/EECの9回目の改訂にあたります。具体的な提案内容を以下に示します[2]

EC指令1976/769/EEC, Annex 1, point 20を以下の内容に改訂[2]をもとに作成)
<ヒ素化合物>

1.

次の用途を目的とした製剤の構成成分及び構成物質として使用してはならない

a)     ボートの船体、籠、いかだ、ネット、魚貝類の養殖に使用される器具や道具、全体的あるいは部分的に水中に沈めて使用する器具や道具

b)     木材保存剤として、ヒ素化合物で処理された木材は、市場へ流通させてはならない

しかしながら、以下の特例事項を定める

1)      物質と製剤の使用:CCA(銅、クロム、ヒ素)タイプの無機塩の溶液であれば、木材に注入するために、真空/加圧法を使用している産業施設においてのみ使用可能

2)      1)で処理された、つまり産業施設においてCCA溶液で処理された木材は市場に流通可能、ただし産業用途のみ許可される(鉄道の枕木、送電用及び通信用支柱、クーリングタワー)

3)     EU加盟各国は、自国の領土において、ケーブルを支えている既存の木製支柱に対してであれば、再処理目的でDFA(ジニトロフェノール、フッ化物、ヒ素)タイプの製剤の使用許可を与えられる。ただしこの製剤は、真空/加圧法を使用する職人によって使用されなければならない。

2.

どのような用途であっても、工業用水の処理における使用を対象とした製剤の構成物質及び構成成分として使用されてはならない。

 

ECは、CCA防腐処理剤の主要な10種類のうち、7種類について使用禁止の検討を開始しました。そしてECの発表資料によると、CCA防腐処理剤の代替品と使用される可能性のある木材防腐剤として、次の混合物をあげています。

このEC指令の改訂は、遅くとも20021231日までに採択される予定です。

 

また、ヒ素を含む木材防腐処理剤の使用禁止に向けた取り組みに関しては、アメリカでも同様の動きがありました。2002212日、アメリカ環境保護庁(USEPA)は、業界による自主的な動きとして、20031231日までに木材への防腐処理に対してCCA(銅、クロム、ヒ素)処理剤の使用をやめ、代替品に変更すると発表しました[3]。これは、業界によるヒ素を含まない木材防腐剤への代替の動きを支持するものです。そしてUSEPAは、20041月から住宅に対するCCA処理木材の使用を禁止する予定と発表しています。

欧州では、木材防腐処理剤として使用されるクレオソート油に対する規制も発表されており[4]、有害性が高い木材防腐処理剤の使用は、日本でも自主的に禁止する動きが必要です。

Author: Kenichi Azuma

<参考資料>

[1]Market Restrictions: CONSULTATION ON SUGGESTED EUROPEAN COMMUNITY LEGISLATION ON THE USE OF ARSENIC IN THE PRESERVATION OF WOOD,European Commission,Public consultation on Arsenic, 5 December, 2001
http://europa.eu.int/comm/enterprise/chemicals/markrestr/arsenic/consultation.htm

[2]COMMISSION OF THE EUROPEAN COMMUNITIES:ENTR PE 2001/144/E3 Arsenic, Draft,Brussels, xxx, COM (2001) yyy final, (提案中)
http://europa.eu.int/comm/enterprise/chemicals/markrestr/arsenic/consultation.htm

[3] U.S. Environmental Protection Agency, EPA Newsroom: Whitman Announces Transition from Consumer Use of Treated Wood Containing Arsenic, February 12, 2002
http://www.epa.gov/epahome/headline_021202.htm

[4] Kenichi Azuma:欧州連合によるクレオソートの規制強化, CSN #217, December 17, 2001
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Dec2001/011217.htm


「住まいの科学情報センター」のメインサイトへ