加熱調理された食品中のアクリルアミドに対する見解
−世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)−
2002年6月29日
CSN #242
2002年5月31日付けCSN #236でお伝えしたように、2002年4月24日にスウェーデン国立食品局(NFA)は、動物実験において発がん性が指摘されているアクリルアミドが高温で調理されたでんぷんを含む食品中(例えば、ポテトチップスやフライドポテトなど)から高濃度検出されたと発表しました。そしてその後、ノルウェー、スイス、イギリス、アメリカでも同様の結果が確認されました[1]。
そのため世界保健機関(WHO)は、国連食糧農業機関(FAO)と合同で、食品中のアクリルアミドから生じる公衆衛生に対するリスクの範囲を可能な限り早く決定するために、この問題に関連する専門家を招集し、2002年6月25-27日にかけて、スイスのジュネーブにあるWHO本部で専門家会合を行いました[1]。
アクリルアミドは、動物実験では発がん性を示すことが知られていますが、人に対する発がん性に関しては、国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類でグループ2A(人に対して発がん性を示す可能性がある)に分類されており、その関連性を示す十分な研究データがありませんでした。
また、スウェーデンなどの研究によって、アクリルアミドは、ポテトチップス、フライドポテト、パンのかりかりしたところ、コーンフレークなどのでんぷん由来の食品を120℃以上の温度で調理した時に生成されることがわかってきましたが、その他のでんぷん由来の食品に関しては実測データがありませんでした。
3日間にかけて議論が行われた結果、専門家会合は、人のアクリルアミドに対する現在の平均摂取量から、人に対する発がん性に関して確定的な結論を出すのは困難であるが、その摂取量が非常に高い可能性があることから、この問題は非常に重要であるとし、次の勧告を発表しました。
1) 調理の過程でアクリルアミドが生成されるメカニズムの決定
2) 人の発がん性に関する疫学研究
3) 他の食品中のアクリルアミドに関する研究
4) 欧州や北米以外の食事に存在するアクリルアミドに関する研究
以上のことから、現時点で利用可能な科学的知見からは、本問題に対してどのように対処すべきかの結論がでていませんが、公衆衛生上の重要な問題として、さらなる研究を行う必要があることから、次回のWHO/FAO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)の議題において、アクリルアミドの問題は優先項目に加えられました。
専門家会合の座長を務めたDieter Arnold博士は次のように述べました。
「あらゆる有用なデータを再評価した結果、我々は、加熱調理された食品中のアクリルアミドに関する新しい発見が、深刻な問題であるという結論に達した。しかしながら、現在の我々の限定された知見では、消費者や行政官など、この問題に関心を抱く人々の全ての質問に答えることができない。」
WHOは、現時点ではWHOが推薦する基本的な食事のアドバイスが変わることはなく、たくさんの果物と野菜を食べ、脂肪分の少ない食品を食べるよう勧めています[2]。予防の観点から不必要なリスクを減らすためにも、ポテトチップスやフライドポテトなど、でんぷん由来の作物を高温で加熱した食品を毎日食べ過ぎないようにしたほうが良いでしょう。
Author: Kenichi Azuma
<参考資料>
[1] World
Health Organization Food Safety Programme: “ADDITIONAL RESEARCH ON ACRYLAMIDE IN FOOD ESSENTIAL, SCIENTISTS DECLARE”,Press Release
WHO/51, 27 June, 2002
http://www.who.int/fsf/
[2] WHO Geneva: “WHO TO HOLD URGENT EXPERT CONSULTATION ON ACRYLAMIDE IN FOOD AFTER
FINDINGS OF SWEDISH NATIONAL FOOD ADMINISTRATION”, Press Release
WHO/32, April 26, 2002
http://www.who.int/inf/en/pr-2002-32.html