殺虫剤ダイアジノンを段階的廃止
−アメリカ環境保護庁(EPA)−
2000年4月1日
CSN #180
ダイアジノンは、毒物及び劇物取締法で劇物に指定されている無色液体の有機リン系殺虫剤で、果樹や野菜などの農業用、芝生などの園芸用、防虫畳、ハエ・蚊・ノミ、ゴキブリなどの防疫用として、広範囲の害虫防除に使用されています。有機リン系殺虫剤は、神経系に影響を与えることがあり、ダイアジノンを過剰に摂取すると、吐き気、頭痛、嘔吐、下痢などの症状が生じます。
アメリカ環境保護庁(USEPA)は、1996年の食料品質保護法(Food Quality Protection Act)に基づき、特に子供への影響を重視して有機リン系殺虫剤の再評価を行ってきました。2000年6月に有機リン系殺虫剤であるクロルピリホスの基準値の見直しを行い、2001年12月31日までに、実質的に全ての家庭用製品への使用と室内外問わず子供が暴露する場所での使用を停止する措置を行っています[1]。
また、2000年10月13日には、アメリカ環境保護庁と有機リン系農薬エチルパラチオンの製造業者チャミノバ(Cheminova)が、エチルパラチオンの在庫の使用を中止する合意に署名したと発表しました。食用トウモロコシへのエチルパラチオンの使用を中止するとともに、2003年10月31日までに、小麦、大豆、綿など他の作物への使用も段階的に中止することとしました。また、アメリカへのエチルパラチオンの輸入も中止し、他の殺虫剤製造へのエチルパラチオンの使用登録も、2002年12月31日までに抹消することとなりました[2]。
そしてアメリカ環境保護庁は、ダイアジノンに対しても同様に段階的な使用停止措置を行なうよう製造会社と合意に達したと、2000年12月5日に発表しました[3]。この合意は、シンジェンタ(Syngenta)とマクテシム・アガン(Makhteshim Agan)の2社との間で行われ、これによりアメリカで1年間に使用される1,100万ポンド(約5,000トン)のダイアジノンのうち、75%が削減されることになります。表1に、ダイアジノンの段階的廃止計画の概要を示します。
表1 アメリカ環境保護庁によるダイアジノンの段階的廃止計画([3]をもとに作成)
用途 |
場所 |
手段 |
実施時期 |
|
家庭 |
室内 |
|
製品登録抹消 |
2001年2月 |
商品ラベルから室内用途の項目を削除(マッシュルームハウスを除く) |
2001年3月1日 室内用途への使用停止 |
|||
販売停止 |
2002年12月31日 |
|||
屋外 |
家庭の芝生、庭などの住居での屋外用途や屋外での農業以外の用途 |
段階的生産縮小 |
2003年までに50%以上生産量削減 2003年6月30日 生産中止 |
|
段階的使用停止 |
2003年8月31日 販売停止 |
|||
製品登録抹消 |
2004年12月31日までに製品登録抹消、それ以降登録業者は製品を小売店から回収 |
|||
農業 |
作物 |
アルファルファ、バナナ、乾燥豆、バミューダ草、セロリ、赤チコリ、柑橘類、クローバー、コーヒー、綿、カウピー、キュウリ、タンポポ、キウイ、ハギ、パセリ、アメリカボウフウ、牧草、コショウ、アイルランドポテト、スウィートポテト、放牧場用地、羊、モロコシ、ほうれん草、カボチャ、いちご、スイスフダンソウ、たばこ、トマト、カブ |
ダイアジノン含有製品のラベルからこれらの作物への使用項目を削除 |
2001年2月 |
アメリカ環境保護庁は、これらの措置によって、居住者や農作物だけでなく、労働者、鳥などの野生生物、飲料水源などの環境に対してもリスクを削減できると述べています。
Author: Kenichi Azuma
<参考文献>
[1] Kenichi Azuma, “アメリカ環境保護庁によるクロルピリホス排除計画”, CSN #177, March 12, 2001
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/March2001/010312.htm
[2] USEPA Office of Pesticide Programs, “Organophosphate
Pesticides: Documents for Ethyl Parathion”, October 13, 2000
http://www.epa.gov/oppsrrd1/op/ethyl_parathion.htm
[3] USEPA Office of Pesticide Programs, “Organophosphate
Pesticides: Documents for Diazinon”, December 5, 2000
http://www.epa.gov/pesticides/op/diazinon.htm