鉛を含む塗装除去時の6つのステップガイド
−オーストラリア環境遺産省−
2001年8月6日
CSN #198
アメリカでは1950年代頃まで鉛を含む塗料が一般的に使用されており、1978年頃まで鉛を含む塗料が販売されていました。そのため、古い家屋の壁の塗装が剥がれ落ちることで発生した塵(ちり)や埃(ほこり)によって、室内空気が鉛に汚染されることが懸念されています[1]。
鉛による曝露は、消化管、神経系、血液、腎臓、免疫系に影響を与え、気分や人格の変化、知能発育遅滞、学習問題、低知能指数(IQ)、活動亢進、行動問題、不可逆性の腎障害を与えることがあります。発達中の子供の方が影響を受けやすいこと、子供の方が大人よりも体重あたりの呼吸量が多いことなどから、特に子供に対する影響が心配されます。
オーストラリアでも同様に、1970年代以前に建築された家屋では、鉛を含む塗料が多用されており、最近になっても一部の地域では、依然として鉛を含む塗料が使用されています。そのため1999年にオーストラリア環境遺産省(DEH)が、「自宅を塗装する際の6つのステップガイド第2版―鉛への警告―:The Six Step Guide to Painting Your Home. Second Edition,−LEAD ALERT−」をまとめ、自宅の塗装の補修時や改装時における、鉛を含む塗装の除去作業ガイドを公開しました[2]。
オーストラリアでは、1950年以前に建築された家屋では、50%程度の鉛を含む塗料が屋内外に使用されており、大まかな指針値として1970年に1%以下に制限されました。そして1992年には、家屋の塗装に使用する塗料の鉛の最大許容含有量を0.25%に勧告し、1997年にはさらに0.1%に引き下げました。現在オーストラリアでは、鉛含有量が0.1%を越える塗料に対しては、ラベル表示しなければなりません[2]。
表1 家屋で使用される鉛を含む塗料類([2]をもとに作成)
種類 |
使用例 |
鉛白(White Lead:炭酸鉛がベース) |
白色顔料やパステル色用の調色顔料して内装外装用塗料の多くに使用。構造材、水切り板、窓枠、戸枠などのトップコート剤、家屋のセメント下塗り剤、都会のフェンスやガードレールなど。 |
ピンク色の下塗り剤 |
内外部に使用する材木の下塗り剤、漆喰の壁の塗工用下塗り剤、水切り板のトップコート剤。 |
その他の家屋用塗料 |
酸化鉛(II)、珪酸鉛(白色トップコート)、オルト鉛酸鉛(鉛丹下塗り剤)、クロム酸鉛(黄、緑、赤、オレンジ系の顔料)、鉛塩(塗料乾燥用)、鉛酸カルシウム(金属屋根用塗料)。 |
*鉛丹(Red Lead:四酸化三鉛)
鉛の毒性は高いため、鉛に対する曝露はできる限り避けなければなりません。オーストラリア環境遺産省が公開した6つのステップガイドに示されている、家屋で使用される鉛を含む塗料を表1にまとめました。また、6つのステップガイドの概略を以下に示します[2]。
ステップ1:始める前に
可能であれば、除去作業を計画している塗装中に含まれる鉛含有量を測定する。測定方法としては、次の3つの方法がある。
次の計画を立案する。
ステップ2:安全確保のための作業計画
家族、隣人、ペットを保護するために
作業者自身を守るために
ステップ3:適切な設定
ステップ4:鉛を含む塗装の除去や被覆
塵や埃の発生が最小限になる方法を使うこと。例え鉛含有量が1%未満の塗装であっても、塵や埃の発生を避けること。以下の中から、状況に応じて可能な限り最も安全な方法を選択すること。
鉛を含む塗装が良い状態にあり、剥がれ落ちたり白い粉を吹き出したりしていないのであれば、塗料を上塗りすることが可能。
ステップ5:清掃
最善を尽くして作業を行っても、特に屋内作業では、少なからず塵や埃が発生するのは避けられない。次に示すように、作業場は少なくとも毎日清掃すべきである。
必要であれば、清掃後の気中鉛濃度が基準値以内であるかどうか測定すること。
ステップ6:鉛汚染廃棄物の廃棄
鉛を含む廃棄物は有害廃棄物に分類されるので、地域や州政府の廃棄ルールに従って適切に処分すること。
Author: Kenichi Azuma
<参考文献>
[1] Kenichi Azuma,「アメリカ国民の家庭内空気質対策意識月間Part4」, CSN #162, November 20, 2000
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Nov2000/001120.htm
[2] Department of
the Environment and Heritage, “The Six Step Guide
to Painting Your Home. Second Edition”, ISBN 0 642 54627 4, 1999
http://www.environment.gov.au/epg/lead/leadpaint.html