大気毒性と室内空気質に関する報告書-Part2

―オーストラリア環境遺産省―


200125

CSN #172

200011月にオーストラリア環境遺産省(DEH)が、大気毒性と室内空気質に関する最終報告書のドラフト(Final Draft of the State of Knowledge Report on Air Toxics and Indoor Air Quality in Australia)[1]を発表しました。前報Part1では、室内空気質に対するオーストラリア国立保健医療研究審議会(NHMRC)の目標値を紹介しました。本報Part2では、家庭、学校、オフィスなどのエリアごとの室内空気質問題について紹介します。

私たちは日常生活の90%以上を室内空間で過ごしています。そしてその空間には、住居、学校、オフィス、交通機関、病院、公共施設などが含まれます。この報告書の中から、図1及び表1にオーストラリア人の一般的な滞在時間割合と曝露汚染物質を示します。

1.家庭における室内空気質

このパートでは、家庭における室内空気質について概説しています。図1に示すように、生活の多くを家庭で過ごすため、住居内での室内空気質は非常に重要です。このパートの概要を以下にまとめました。 

理想的な住宅(ビクトリア州環境保護庁による提案)

 

2.学校における室内空気質

このパートでは、学校における室内空気質について概説しています。学校に通う子供たちは1週間あたり多くの時間を学校で過ごすため、別の問題として考えなければならないこと、子供は大人と比べて体が小さく代謝率が高いこと、体重あたりの呼吸量が多いことなどから、大人よりも室内空気汚染物質の影響を受けやすいことを考慮しなければなりません。このパートでは、学校において室内空気質に影響する要因は一般的な建物と同じだが、学校特有の多くの要因があると述べています。このパートの概要を以下にまとめました。

その他このパートでは、クィーンズランド州のある学校でのVOCsによる健康影響問題事例が掲載されています。1993年、継ぎ目なしフローリングを施工した、隣接した教室と職員室があり、このフローリング材は、エポキシ樹脂素材でポリウレタン製のコーティング剤が塗装されていました。

不快な臭いが施工中及び施工後に報告されたため、この問題を改善するよう施工業者が試みたが成功せず、フローリング材は取り除かれました。そして19941月に同じフローリング材が同じ施工業者によってハーバートンの新設学校で施工され、不快な臭いと健康障害が生じました。スタッフがそこで働き続けることを拒絶したため、19945月に学校は閉鎖されました。

この問題に関してクィーンズランド州の公衆労働建築環境研究所が調査したところ、キシレンとイソブチルアルデヒドが臭いの発生源として検出されました。問題の多くは製品の誤った施工方法にあったと考えられています。エポキシ樹脂の希釈溶剤として使用されていたキシレンの乾燥が不十分なままウレタン塗装が行われたため、キシレンがフローリング中に捕捉され、長期間にわたりこれらのVOCsが徐々に揮発していったこと、教室の換気率が低かったことが原因と推定されています。

日本でも最近、学校での室内空気汚染問題に関する報告が増え。いわゆるシックスクール症候群と呼ばれています。この問題は、アメリカでも大きな問題として取り上げられています[2]。アメリカ環境保護庁のサイトでは、対策ツール(The Indoor Air Quality (IAQ) Tools for Schools Kit)が公開されてます[3]。

 

3.オフィスでの室内空気質

このパートでは、オフィスにおける室内空気質について概説しています。オフィスにおける室内空気質問題は、欧米ではシックビルディング症候群に大きく関与しており、1985年アメリカ環境保護庁(USEPA)の新しい庁舎においてシックビルディング症候群(SBS)が生じたことは有名です。このパートでは、この問題に関して詳しくは述べられおりませんが、その概要を以下にまとめました。

Author: Kenichi Azuma

<参考文献>

[1] Department of the Environment and Heritage, Final Draft of the State of Knowledge Report on Air Toxics and Indoor Air Quality in Australia, November 2000

[2] Charlene W. Bayer, American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers (ASHRAE) IAQ Applications, Humidity Control And Ventilation in Schools, July 27, 2000
http://www.ashrae.org/ABOUT/iaqstudy.htm

(解説)
Kenichi Azuma, アメリカの学校におけるIAQ問題, CSN #156, October 9, 2000
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Oct2000/001009.htm

[3] USEPA, The Indoor Air Quality (IAQ) Tools for Schools Kit (Kit), EPA document number 402-C-00-002, August 2000
http://www.epa.gov/iaq/schools/tools4s2.html


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