化学物質による室内汚染等の国際シンポジウム


2001115

CSN #169

科学技術庁科学技術振興調整費の助成により実施している「室内化学物質空気汚染の解明と健康・衛生居住環境の開発 (Research on Indoor Chemical Pollution and Strategies for Healthy Living Environment)のための学際的なプロジェクト「室内化学物質空気汚染調査研究委員会 (Indoor Air Pollution by Organic Compounds IAPOC)[1]が、これまでの研究成果をもとに、気候環境、生活習慣の異なるアメリカ、ヨーロッパ、日本の建築学、化学、公衆衛生学、医学の研究者によって、健康影響、室内環境、地球環境の3つの視点から、健康住宅のあるべき姿を明らかにしようという目的で、「化学物質による室内汚染の現状とヘルシーハウス実現のための国際シンポジウム」[2]2001112()13日(土)に建築会館ホールで開催しました。

この国際シンポジウムは、日本建築学会とIAPOCの主催のもと、関係省庁や関連学会の後援を得て、この問題に関する最先端の世界中の科学者が招待され、講演が行われました。また、この問題に多大な関心を有する約200名の専門家と市民が参加しました。国際シンポジウムの4つのセッションを以下に示しますが、詳細は参考資料[2]をご覧下さい。

セッション1:多種類化学物質過敏症(MCS)と低濃度化学物質による健康への影響

セッション2:有機化合物による室内空気汚染

セッション3:ヘルシーハウスの設計

セッション4:ヘルシーハウスのための提言

この国際シンポジウムの内容は、室内空気質に関しては世界で最も権威のある科学雑誌Indoor Air[3]で特集号が組まれて公開される予定となっています。この雑誌は、デンマーク工科大学(Technical University of Denmark)Sundell博士が編集委員長を務める雑誌で、国際室内空気質気候学会(International Society of Indoor Air Quality and Climate: ISIAQ)が出版しています[3]Sundell博士は、このシンポジウムのセッション2で、室内空気汚染と健康に関する研究成果の多次元レビューというタイトルで講演されました。また、ISIAQは「Indoor Air」という国際会議を主催しており、2002630日から75日にかけて、「Indoor Air 2002」がカリフォルニアで開催されます[4]

この国際シンポジウムでは、この問題に関わるさまざまな議論が公開討論を通じて行われました。そしてシンポジウムの閉会セッションでは、科学者として、一市民として、この国際シンポジウムの参加者有志による署名をもとに、アピールが宣言されました。

アピールは、さまざまなメディアを通じて世界中に発信される予定となっています。全文はそちらをご覧下さい。概要としては、シックビルディング症候群、シックハウス症候群、シックスクール症候群、多種類化学物質過敏症、化学物質過敏症、有毒物質誘導不耐性症候群、持続的疲労性症候群など数多くの生物学的メカニズムが未解明な問題があり、これまで得られた低濃度化学物質曝露による健康影響の可能性に関する科学的知見が、化学物質と健康との関係についての認識と化学物質に起因する被害の予防法の再考を求めており、世界保健機関(WHO)が「健康的な室内空気を吸う権利」で宣言した原則に基づき、21世紀に生きる全ての人々がこの深刻な問題に取り組むことを訴えるものとなっています。

世界保健機関(WHO)の宣言に関しては、CSN#147で紹介していますので、そちらをご参考下さい[5]

閉会セッションでのアピールは、世界中に誇れる内容となっています。ハーバード大学のSpengler博士によって、力強くゆっくりと読み上げられました。より多くの人々がこの問題を理解し、取り組むことが求められています。

Author: Kenichi Azuma

<参考資料>

[1] 日本建築学会,「室内化学物質空気汚染調査委員会:IAPOC
http://news-sv.aij.or.jp/iapoc/IAPOC.htm

[2] 日本建築学会, IAPOC, 「化学物質による室内汚染の現状とヘルシーハウス実現のための国際シンポジウム」, January 12-13, 2001
http://news-sv.aij.or.jp/iapoc/test.htm

[3] International Society of Indoor Air Quality and Climate (ISIAQ)
http://www.isiaq.org

[4] International Society of Indoor Air Quality and Climate (ISIAQ), Indoor Air 2002
http://www.indoorair2002.org

[5] Kenichi Azuma, 健康的な室内空気への権利, CSN#147, August 7, 2000
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Aug2000/000807.htm


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