揺れ動く遺伝子組み替え作物


1999年5月13日

CSN #048

情報源: Rachel-Weekly, ---May 6, 1999---, その他

1999年 5月 6日のレイチェル・ウィークリーやその他の情報を元に最近の遺伝子組み替え作物についてレポートします。 

(注記)本レポートでは遺伝子組み替えについて以下の略語を使用します。

・遺伝子組み替え:GM(genetically modified

・遺伝子組み替えされていない:GMフリー(GM free

最近、ヨーロッパや日本を初めとするアジア諸国では、遺伝子組み替え技術について反発や異論が高まっている。その例としてレイチェル・ウィークリーでは以下のように挙げている。 

1)1999年4月、ヨーロッパ6カ国のメーカーが参加している、7つの食品販売チェーンがGMフリー食品を扱う公約をした。また、GMフリーであるトウモロコシ、ジャガイモ、大豆、小麦を供給してくれる生産者と長期契約を締結し、GMフリー作物を供給してくれる生産者を支援すると発表した。(文献1)

<各国の参加メーカー>

さらに、テスコ、セーフウェイ、サインズバリー、アイスランド、マーク・アンド・スペンサー、コープ、ウェイトローズの食料販売店はGMフリー協会を結成し、以下のメーカーがそれに参加している。

関連ニュース: http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/990402.html

 

2)インドの最高裁判所はGM作物の試験禁止を支持した。 

3)1999年に、アメリカで3番目に大きいトウモロコシ加工業者であるA..スタリー社は、欧州連合で認可されていないGMトウモロコシを受け入れないと発表した。ヨーロッパはアメリカにとって巨大市場であり、ヨーロッパの激しい反動は、アメリカ農場主にGM作物栽培を再考させる。 

4)英インディペンデント誌によると、イギリスでGM食品を支持しているのは、英モンサント社とブレア政権だけである。ブレア首相は側近議員にGM反対が成功しているのは「束の間の騒ぎだ」と話している。ブレア政権は最近の選挙で英モンサント社から資金援助を受けているようだ。 

5)GMジャガイモの生体への有害性に関する研究報告

この情報はについては、ご存じの方も多いと思う。

英アバディーンのロウェット研究所のアーパド・パズタイ(Arpad Pusztai)博士が1996年から行った研究報告で、1998年8月11日付け英タイムズ紙に掲載されている。 

パズタイ博士は、害虫耐性があるタチナタマメの遺伝子を組み込んだジャガイモをラット五匹に与えた。この遺伝子はアブラムシなどの害虫を寄せつけないタンパク質をつくり出す機能がある。実験期間は百十日で、人間なら十年に相当する。その結果、腎臓、脾臓、胸腺、胃などの組織において成長障害と免疫力低下が観察された。同じ機能をもつマツユキソウの遺伝子を組み込んだジャガイモを与えたラットには、このような影響は見られなかったという報告である。 

1998年4月のテレビ出演でパズタイ博士は「私自身はGM食品を食べない。一般市民を実験台に使うとは不当な行為だ。」と述べている。 

そこで、GM支持派からの猛烈な反発があった。、最初、ロウェット研究所のフィリップ・ジェームス(Philip James)所長はパズタイ博士を擁護していたが、しだいにパズタイ博士の研究結果に疑念を抱くようになり、非難するようになった。そしてついには退職するよう命じたのである。 

1998年10月のロウェット研究所の監査報告では、パズタイ博士の研究方法を擁護したが、パズタイ博士は再度データを確認するよう命じられた。そしてパズタイ博士は自分の研究結論の妥当性を確認している。その報告書の詳細内容はいまだに明らかになっていない。 

1999年2月に、13カ国20人の科学者グループがパズタイ博士の復帰要求宣言とパズタイ博士の研究結果を支持すると発表した。また、後にロウェット研究所はモンサントに資金援助を受けていることが発覚したという。 

パズタイ博士はロウェット研究所で35年間研究を行い、延べ270本の研究論文を発表している大ベテラン研究者である。GM食品の安全性に関して重要な試金石となる研究結果を報告したにも関わらず、全容を発表できないまま封じ込められた。 

本来ならばこの研究結果をもとに、さらに発展的な研究がなされ、GM食品の安全性について明確にすべきではないかと思う。 

英アバディーンのロウェット研究所のアーパド・パズタイ博士の研究に関するニュース記事が以下にありますのでご参考下さい。

URL: http://www.bekknet.ad.jp/~ktosh/special/articles/genetic_potato.html

 

その他パズタイ博士の研究報告に関する関連サイト

URL: http://www.rri.sari.ac.uk/gmo/index.html

 

<参考サイト>

イギリス・モンサント社:http://www.monsanto.co.uk/

ロウェット社研究所:http://www.rri.sari.ac.uk/

GM食品に関する関連情報(BBCのサイト)

URL: http://news.bbc.co.uk/hi/english/business/the_company_file/newsid_326000/326558.stm

 

<参考文献>
[1]Paul Waugh, "Brit. Stores Tesco and Unilever Ban Genetically Manipulated Products," THE INDEPENDENT (London, England), April 28, 1999, page unknown.


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