燃焼汚染物質に対する室内空気質ガイドライン
−カリフォルニア州環境保護庁−
2001年9月24日
CSN #205
前報CSN #204において、表1に示すカリフォルニア州環境保護庁の室内空気質ガイドライン[1]の中から、第1回目として、ガイドラインNo. 1「家庭におけるホルムアルデヒド:Formaldehyde in the home」の概要を紹介しました[2]。本報では第2回目として、ガイドラインNo. 2「家庭における燃焼汚染物質:Combustion Pollutants in Your Home」[3]の概要を紹介します。
表1 カリフォルニア州環境保護庁の室内空気質ガイドライン([1]をもとに作成)
内容 |
タイトル |
公表年月 |
ガイドライン No. 1 |
家庭におけるホルムアルデヒド |
1991年9月 |
ガイドライン No. 2 |
家庭における燃焼汚染物質 |
1994年3月 |
ガイドライン No. 3 |
家庭における塩素系化学物質 |
2001年5月 |
FAQ(よくある質問) |
家庭用空気清浄機 |
2000年4月28日 |
小冊子 |
室内空気汚染の削減 |
2001年5月2日 |
主にこのガイドラインでは、1)燃焼汚染物質の特徴と健康及び排出源、2)家庭における予防措置ついて概説しています。それぞれの概要を以下に示します。
1) 燃焼汚染物質の特徴と健康及び排出源
木材、石炭、天然ガス、たばこ、灯油などを燃焼すると、気体状あるいは粒子状の燃焼汚染物質が発生します。このガイドラインでは、これらの燃焼汚染物質の種類と健康影響及び排出源について概説されています。表2、表3にその概要を示します。
表2 燃焼汚染物質と健康影響([3]をもとに作成)
燃焼汚染物質 |
特徴 |
健康影響 |
排出源 |
一酸化炭素(CO) |
無色・無臭・無味の気体 |
高濃度では死亡、頭痛、疲労、吐き気、視力及び集中力低下、胸痛 |
ガス器具の動作不良、ガスストーブ、薪ストーブ、石油ストーブ、炭火焼用グリルの誤使用、屋内ガレージでの車のアイドリング、汚染された外気 |
二酸化窒素(NO2) |
無色・無味の気体、鼻を刺すような臭い |
肺へのダメージ、長期曝露による肺疾患、呼吸器感染 |
ガスストーブ、ガス器具の動作不良、薪ストーブ、石油ストーブ、炭火焼用グリル、自動車 |
粒子状物質(PM10) |
小さくて吸入可能な粒子、PM10は粒子径が10μ以下 |
鼻・喉・眼への刺激、気腫、気管支炎、アレルギー、喘息、気道及び眼への感染、肺がん |
たばこの煙、薪ストーブ、石油ストーブ、炭火焼用グリル、香道、ハウスダスト、趣味、汚染された外気 |
多環芳香族炭化水素(PAHs) |
粒子状及び気体状の有機物質 |
肺がん、胃がん、膀胱がん、皮膚がん、鼻・喉・眼への刺激 |
たばこの煙、薪ストーブ、石油ストーブ、炭火焼用グリル、セルフ・クリーニング・オーブン、香道、ハウスダスト、趣味、汚染された外気 |
表3 排出源の概要([3]をもとに作成)
排出源 |
概要 |
開放型燃焼器具 |
開放燃焼型のガスストーブ、石油ストーブ、炭火焼用グリルなどは、直接室内空気中に燃焼汚染物を排出するため、室内の燃焼汚染物濃度が高くなるおそれがある。 |
換気型燃焼器具 |
暖炉、薪ストーブ、ガス瞬間湯沸機、ガス衣類乾燥機は、燃焼汚染物を室外へ排気する。しかしながら、排気システムにおいて、設計・据え付け・維持管理が適切に行われていなければ、室内に燃焼汚染物質が流入する。排気筒、煙突など燃焼汚染物質が漏れたり、それらが詰まったりすると、室内に流入するおそれがある。暖炉や強制暖房システムにおいて吸排気のバランスが乱れていると、燃焼汚染物質が室内に流入するおそれがある。 |
環境中たばこ煙 |
気体状や粒子状の物質が混入しており、特にたばこの先の燃焼部から発生する「副流煙」に多く含まれる。一般的に環境中たばこ煙(ETS)は、室内の粒子状物質や多環芳香族炭化水素(PAHs)の重要な排出源であり、他の有害な汚染物質も排出する。 |
ハウスダスト |
粒子状物質やPAHsが含まれており、ほこりが立つと吸入するおそれがある。手に付いたハウスダストが口に触れると、口から摂取するおそれがある。床に近い幼い子供たちは特に注意すべき。 |
汚染された外気 |
薪ストーブ、暖炉、自動車排気ガス、野外バーベキュー、芝刈り機(灯油燃料)から排出される燃焼汚染物質が室内に流入するおそれがある。 |
その他 |
屋内ガレージで自動車のアイドリングを続けると、室内に燃焼汚染物質が流入するおそれがある。香道、炭火焼用グリル、燃焼を伴う趣味は、室内汚染物質を増加するおそれがある。 |
2) 家庭における予防措置
ここでは、家庭における予防措置について、燃焼器具や換気を中心に概説しています。このガイドラインでは、一般に予防措置を行っていれば、燃焼汚染物質の濃度を測定する必要がないと述べています。以下にそれらの概要を示します。
(a)開放型燃焼器具や換気が不十分な燃焼器具に対する予防措置
(b)換気型燃焼器具の使用と維持管理
(c)適度にバランスのとれた換気を確保
(d)空気清浄機の使用とメンテナンス、室内の清掃
これから暖房器具を使用する季節に入ります。快適で健康的な室内空気質を得るためにも、燃焼器具を使う場合は、使用する前に入念に点検し、安全に使用することが大切です。また、ハウスダスト、環境中たばこ煙(ETS)、屋内ガレージでの車のアイドリングによる一酸化炭素、炭火焼用グリル等の開放型燃焼器具への対策は、日常からの心掛けが大切です。
Author: Kenichi Azuma
<参考文献>
[1] A department
of the California Environmental Protection Agency, The California Air Resources
Board (ARB), “Indoor Air Quality and Personal Exposure Assessment Program”
http://www.arb.ca.gov/research/indoor/indoor.htm
[2] Kenichi Azuma,「ホルムアルデヒドに対する室内空気質ガイドライン」, CSN #204, September 17, 2001
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Sept2001/010917.htm
[3] The California Air Resources Board (ARB), “Combustion Pollutants in Your Home - Guideline No. 2”, March 1994