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人質を見殺しにする朝日新聞
10月16日の朝日新聞は、「被害者帰国――静かに迎えたい」と言う見出しの社説で、次のように言っていました。
「地村さんと浜本さん、蓮池さんと奥土さんはそれぞれ結婚し、子どもは大学生や中学生にまで育った。曽我さんは元米兵と結婚し、やはり子どもは大学で学んでいる。若かった5人はいずれも中年になった。 ・・・今となっては、それぞれの家族が日々の暮らしを根本から変えることは、私たちが考えるほど容易なことではないのかもしれない。・・・ 今後のことは、まず家族とともにゆっくりと語り合えばよい。慎むべきは、私たちが性急さを欲したり、考えを押しつけたりすることではないか。・・・ありのままの被害者を静かに、そして温かく迎え入れたいと思う」
この社説から読みとれることは、「祖国日本への帰国を急がなくてもいい、北朝鮮に残ることがあってもいい、あるいはそういう選択があり得る」と言うことだと思います。そういうことを回りくどい言い方で言っているのだと思います。朝日新聞は拉致被害者が北朝鮮に残ることを望んでいるとか、日本に帰国することを望んでいないとか、その方が幸福であると本気で考えているのでしょうか。
以前、中国に多数の残留日本人孤児がいましたが、その大半が日本に永住帰国しました。彼らは物心つかないうちに日本人の両親と生き別れになり、中国人の養親の元で中国人として育ちました。成人してからは中国人の配偶者と結婚して家庭を持ち、中国に生活基盤がありました。中国人として生まれ育った子供たちもいました。それにもかかわらず大半の孤児たちはまだ見ぬ祖国日本に永住帰国する道を選びました。彼らは決して人質ではなく、監禁状態に置かれていた訳ではありませんでしたが、日本に帰国する道を選びました。
一方、今回の拉致被害者は言うまでもないことですが、日本人として日本に生まれ育ち、日本で成人した日本人です。北朝鮮により拉致され、長年望郷の念を募らせてきた人たちです。日本の自由や豊かさも知っている人たちです。日本には帰りを待っている両親がいます。仮に今の生活基盤が北朝鮮にあり、北朝鮮で生まれ育った子供がいたとしても、そんなことは問題ではありません。被害者たちが帰国を望まないはずがありません。常識で考えれば分かることです。
被害者が帰国の希望を口に出来ないのは、子供を人質に取られ口を封じられているからに他なりません。彼らの表情を見れば容易に読みとることが出来ます。記者会見の様子を見ると彼らの表情は硬く、言葉少なでぎごちなく、とても自由に語っているようには見えません。その、自由にものを言えない拉致被害者に対して、「ありのままに迎えよう」などというのは、北朝鮮の口封じに協力しようと言っているのと同じ事です。
平成14年10月16日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ