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内心では民主主義を恐れている朝日新聞

 4月27日の朝日新聞は「天声人語」で、次のようにアメリカ社会を批判していました。

 「うそのような話である。うそを法律で禁止するというのだ。新型肺炎をめぐって虚偽報告のあった中国ではなく、食品をめぐって虚偽表示が横行した日本の話でもない。米国でのことである」
 「AP通信などが報じ、先日ニューヨーク・タイムズ紙が詳しく伝えた。一瞬、困った国だと思った。あの国だったらやりかねない。何しろ禁酒法を実際に実施した国だ。正しいと思ったら、法で人々に強制することをいとわないところがある」
 「かつては禁酒を強制した結果、闇の売買がはびこった。それをマフィアが仕切って裏社会が栄えた。その二の舞いではないか。うそが闇にもぐり、うそで固めた裏社会ができるかもしれない。マフィアが仕切るのは無理だとしても、裏社会で尾鰭(おひれ)のついたうそが表社会にあふれてきたらどうなるか」
 「アイオワ州の小さな町でのことである。その名もハムレットという町長が発案者だ
 「人口はたった53人で議員4人の町である。いまは、ささやかな動きにすぎない。ただ、この動きが全米に波及することはありえないと言い切る自信はない」


 朝日新聞は「禁酒法」の例を引いてアメリカを批判していますが、何事にも失敗は付き物です。問題は失敗だと分かったときに、速やかに是正の措置が執られるか否かの問題だと思います。失敗を咎めることは建設的な批判ではありません。
 アメリカの禁酒法は失敗だったとしても、「禁煙法」は歴史的な成功を収めつつあると言えます。「正しいと思ったら、法で人々に強制することをいとわない」というのは、失敗例ばかりではありません。

 また、朝日新聞は、うそを禁止すると「また、うそが闇にもぐり、うそで固めた裏社会ができるかもしれない」と言っていますが、そういう言い方をするのであれば、わが国では売春防止法で売春を禁止した結果、闇の売春がはびこり、売春が暴力団の資金源になったことも事実と言わなければなりません。朝日新聞は「正しいと思ったことを法で人々に強制する」売春防止法は、悪法だと思っているのでしょうか。
 売春防止法に限りません。麻薬取締法だって、覚醒剤取締法だって、大麻取締法だって皆同じです。「禁止した結果闇取引がはびこった」という言い方をするのであれば、それはその通りですが、だから法律を廃止して解禁すべきだと言う人はいません。朝日新聞も決してそういう主張はしないでしょう。

 朝日新聞は一体何を言いたいのでしょうか。何を恐れているのでしょうか。町民の正当な代表者である議員の合議で法律が制定されることは、民主主義の国では極めて当然のことです。これを恐れるのは民主主義を恐れているとしか言いようがありません。
 わが国では残念ながら政治家が自由に法律を提案したり制定することができず、内閣法制局とか各省庁の官僚、審議会の学識経験者の了解を取り付けないと法案を提出できないのが実態ですが、この方が異常なのです。

平成15年4月27日  ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ