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視聴率第一で何が悪い

 12月11日の「asahi.com」は、「日テレ視聴率買収事件、第三者機関が『視聴質』など提言」という見出しで、次のように報じていました。

 
日本テレビのプロデューサーによる視聴率「買収」事件について、第三者機関の「放送倫理・番組向上機構(BPO)」(理事長=清水英夫・青山学院大名誉教授)は11日、「視聴率至上主義の実態の反映であり、視聴者や社会への背信行為」とする見解と、放送業界が信頼を取り戻すための提言を発表した。

 提言は(1)視聴率と番組の質を測る視聴質調査を併用して番組を総合的に評価するための、放送局、広告会社、広告主、制作会社、専門家、市民などが参加した機関の設置(2)放送関係者への倫理研修の強化、など。また、視聴者には、番組に対する積極的な批判や発言を、新聞や雑誌には、視聴率ランキングなど競争をあおるような企画の再検討を要望した。・・・

 清水理事長は「事件は偶発的でもプロデューサー個人の問題でもない」との認識を示し、「放送による人権侵害や低俗番組の横行、青少年への悪影響など、BPOが取り組む問題の背景には、視聴率が営業に直結している放送業界の構造的な問題がある」と指摘した。

 「放送倫理・番組向上機構(BPO)」は、放送局が視聴率を重視することを「視聴率至上主義」と言って非難していますが、今回の事件で非難されるべきは「買収」によって視聴率を捏造した行為であって、視聴率そのものには何の罪もありません。「視聴率至上主義」と言って「視聴率」そのものを批判することは、露骨な議論のすり替えだと思います。

 このような非難は、例えば選挙で買収などの選挙違反が起きるのは「得票至上主義」があるらからだと言って、得票の多寡によって当選者を決める選挙を見直そうというのと同じです。有権者の得票により当選者を決める選挙を止め、有識者からなる第三者機関を作って、候補者の質を評価して当選者を決めようというのと同じです。そのような発想は民主主義の根本原理の否定であると思います。

 視聴率を軽視して番組が作られるようになればどうなるでしょうか。誰も見ない番組、「質の高い」偏向番組が延々と放送されることは明らかだと思います。誰も読まない「質の高い」偏向新聞が大量に発行されている新聞の現状と同じです。日本のマスコミの中に、こういうことを願っている人間がいると言うことは、まことに憂うべきことだと思います。

 テレビ放送の世界を「視聴率至上主義」と言うならば、新聞業界は「部数至上主義」の世界と言えますが、これは押し売りと景品の多寡により部数を競っているだけで、本当の意味での「部数至上主義」ではありません。景品や、押し売りによって得られた部数は、買収によって得られた視聴率と大差ないと思います。

平成15年12月14日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る   
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