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国民に情報を伝えない日本の新聞

 10月8日の朝日新聞に公務員の給与改正(引き上げ)法案をめぐって、自民党の一部議員が衆議院本会議で「造反」したことが報じられました。この経済危機の折りに、たとえ0.74%であっても引き上げるなどと言うのは論外で、多くの国民が関心を持つニュースであると思います。
 ところが、この記事を読んでも「田中和徳氏ら自民党の当選一回の若手代議士約10人が採決の直前に議場を退席し、棄権した」とあるだけで、正確な人数も田中氏以外の議員の名前も書いてありません。名前が判ればその議員の支持率はきっと上がると思います。反対に官公労組の利益の代弁者として行動している議員の名前が分かれば、その議員は次回の選挙で落選するかもしれません。それが民主政治の正常な姿です。議員の行動と支持率が密接にリンクするようになれば、他の議員も有権者の支持を求めて有権者の考え方に沿った発言や行動をすることになるはずです。

 ところが日本の新聞は今回に限らずいつも「若手議員」とか「農林議員」、「郵政族」とかの報道ばかりで議員の名前を報道しません。郵政三事業の民営化に反対して水面下で動いているのが誰か、公務員が接待を受けることを処罰する法律を作ることに、陰で反対している議員が誰かがはっきり報道されれば、選挙で国民が審判を下すことができます。
 選挙の度に有権者がしらけたり、誰に投票するか決めかねたりして、その結果投票率が下がるのは、結局、情報が少ないからです。新聞が議員の主張や日常の活動をきちんと報道していれば、有権者が投票に迷うことは少なくなると思います。議員の政治行動が支持率に敏感に反映し、当落に結びつくようになれば議員の発言、行動も熱心になり、無能な、質の悪い政治家は淘汰されていくようになるはずです。

 日本の新聞はなぜ議員の名前や日常の活動を報道しないのでしょうか(たまに報道することがあるのは不祥事だけです)。なぜ、自分たちが選んだ評論家や識者の意見を掲載することはあっても、議員の意見を報道することはないのでしょうか。それは有権者と議員が直接結びついて、国民の声がストレートに政治に反映しては困るからだと思います。そうなれば新聞の意見が政治に反映しなくなってしまうからです。日本の新聞社の目的は、国民の多数意見を政治に反映することではなく、自分たちの意見を政治に反映することだからです。

平成10年10月10日     ご意見・ご感想は  こちらへ     トップへ戻る     A目次へ