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「広告」が存在しない新聞業界

 6月19日の「asahi com」は、「保険の比較広告、普及へ 金融庁がルール作り」という見出しで、次のように報じていました。
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 法令違反の恐れがあるとして保険業界が避けてきた保険商品の比較広告について、有識者による金融庁の検討チームは19日、消費者にとって比較情報は有益だとして、あいまいだったルールを明確化して普及を促すべきだとの報告をまとめた。・・・

 保険業法は、広告や第三者による保険商品の比較について「誤解させる恐れ」のある表示を禁じているが、どんなケースが該当するのかは、はっきりしていなかった。

 そのため、複数の保険会社の商品を扱う「乗り合い代理店」が比較を望んでも、各保険会社は法令違反のリスクがあるとして拒んできた。消費者にとっては、複雑・多様な保険商品を一度に比較して自分に合った商品を選ぶ手段が乏しかった
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 消費者にとって、広告は必要・不可欠の存在です。いくつもある商品の中から、もっとも良質で、かつ安価で、自分にあった商品を選択するためには比較広告は非常に有益です。弁護士業界は未だに比較広告を禁止していますが、そのような制限は消費者の選択の自由を甚だしく損なっていると言えます。

 ところが、この広告全盛の世の中にあって、
比較広告はおろか広告そのものが全く存在しない業界があります。それは、新聞業界です。新聞業界では新聞自身の商品情報を提供する広告はほとんど存在しません
 広告が存在しない商品では、消費者が合理的に商品を選択することが非常に困難になります。特に新聞のように商品の大半が小売店による店頭販売ではなく、専売店による宅配という訪問販売に限られている場合は、消費者が商品を比較検討することが不可能で、商品を合理的に選択する機会は皆無と言っていいと思います(ちなみに新聞は訪問販売においても、販売員は商品については全く説明をしません)。

 新聞購読に当たって、中身を比較検討して新聞を選んでいる人はほとんどいないと思います。そもそも、新聞に関する情報が何もない中で、消費者が新聞の中身を比較検討することなど不可能だと思います。
 そのような、消費者による商品の合理的選択が困難な新聞業界にあっては、トップシェアを占める商品(新聞)は、単に販売力(宅配網)が強力であるが故に高いシェアを占めているのであって、その商品が消費者の高い支持を得ていることを意味しないと思います。

 新聞企業の中には、その高いマーケット・シェア故に、あたかも自分たちの意見が多数の国民、読者の支持を得ているかのごとく思い込んでいる者がおり、また読者の中にもそのように思い込んでいる人達がいますが、それは全くの錯覚、誤解であると言うべきです。
 新聞記事に書かれている意見はあくまで単なる新聞社の意見であって、決して国民、読者の意見を反映しているものではありません新聞記事を読む者は、常にこのことを心に留めておく必要があると思います。

平成8年6月24日   メールはこちらへ    掲示板    トップへ戻る   目次へ