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少子化対策の破綻と言論の自由がない社会

 12月21日の読売新聞は、「『人口減前提の政策を』実らぬ少子化対策」という見出しで、次のように論じていました。
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 今回の人口推計により、政府・与党による従来の少子化対策が効果をあげていないことがより鮮明になった
 政府が少子化対策を前面に押し出したのは、1994年12月の「エンゼルプラン」が最初で、保育サービスの充実に主眼を置いていた。99年の新エンゼルプランでは、女性の雇用環境の改善なども含めた多角的な対策が始まった。・・・

 ただ、政策研究大学院大学・松谷明彦教授(マクロ経済学)は「これから少子化対策を進めても、少子高齢化と人口の減少という問題の解決は難しい」と言う。松谷氏は「人口の増加を前提とした従来の政策は180度転換する必要がある。・・・
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 読売新聞は、「政府・与党の少子化対策が効果を上げていないことがより鮮明になった」と言って、従来の少子化対策が誤りであることを明確に認めました。遅きに失したとは言えこれは重要なことだと思います。しかし、誤りを指摘してはいるものの批判のトーンはありません。誤った施策の中止を求めてもいません。従来の少子化対策に代わるべき提案もありません。それどころか少子化には打つ手がない、むしろ少子化時代に備えることが大事だといって居直っています
 重要な政治課題に関して、長年、巨費を投じてきた施策が誤りであったことが明らかになった以上、その原因を徹底的に糾明して誤りを繰り返さないことが重要であって、このような論説は無責任と言わざるを得ません。

 読売新聞が誤りを指摘しながら批判できなかったのは、彼らもまた政府・自民党と同じ「少子化対策」を長年主張してきたからだと思います。いや、読売新聞に限りません。多くのマスコミや厚生労働省の官僚、審議会の「有識者」達が唱えてきた「少子化対策」とは、イコール、「保育所の増設」、「育児休暇制度の創設」に代表される「共働きの子持ち女性の生活支援策」であり、この点については異論はおろか議論さえ表面化することはありませんでした。支援の対象外である子持ちの専業主婦や、未婚の女性達、男性達の意見は全く採り上げられることがありませんでした。

 今までの少子化対策とは、共働きの子持ちの女性を優遇し、結果的に専業主婦を経済的に冷遇し、
共働きをしなければ経済的に見劣りのする社会を作り、結婚する女性に共働きを強い、独身女性達が結婚して専業主婦になる道を閉ざし、結婚を躊躇させ、少子化を加速させる結果となりました。
 施策が誤りであったことが明らかになった以上、直ちに中止されるべきであることは言うまでもありません。それにもかかわらず、中止を求める声が全く起きていないのは、それらの施策の実施を求めてきた人達の本当のねらいは、少子化の解消ではなく少子化に便乗した利益の獲得であったからに他なりません。

 長年の少子化対策の誤りが明確になった以上、わが国に言論の自由があるならば、これらの施策を推進してきた人達に対し、厳しい批判が浴びせられるのが当然です。しかるにこれらの
批判が表面化することがないのは、わが国に言論の自由がないことの証だと思います。

平成18年12月24日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ