A133
選挙の争点(その2) 「テロ特措法延長問題」は、なぜ選挙の争点にならなかったのか

 7月31日の読売新聞は、「衆参ねじれ 必要な政策の推進が大事だ 民主党は『大人の政治』を」と題する社説で、次のように論じていました。
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◆試金石はテロ特措法
 ・・・試金石は、11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法の延長問題だ。秋の臨時国会の最大の焦点になる。
 アフガニスタンで対テロ作戦に当たる米英軍などへの支援の一環として、インド洋で燃料補給などの活動をしている海上自衛隊艦船の派遣継続は、悪化している現地情勢を見ても、今、打ち切ることは出来ない。
 派遣を中止すれば、テロに対する国際協力活動から脱落したと見なされ、国際社会の信頼を失う恐れがある。
 だが、民主党はテロ特措法の過去3度の延長に、ことごとく反対してきた。これまでは、参院で与党多数の下で、延長の改正テロ特措法が成立したが、今度はそうはいかない
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 また、8月3日の産経新聞は、
「テロ特措法 国益考え責任政党の道を」と題した社説で、次のように論じていました。
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 ・・・インド洋で海上自衛隊が洋上給油活動を行うためのテロ対策特別措置法が、11月1日で期限切れとなる。民主党が秋の臨時国会で、期限延長の改正案にどう対応するかが、さっそく、焦点となっている。
 しかし、小沢一郎代表は「これまで反対していたのに賛成するわけがない」と、反対する姿勢を早々と示し、米国政府の懸念も招いている。
 日米同盟や日本の国際的信用など、国益を考えた対応をとれないようでは、参院選で民主党を勝たせた有権者の多くが「やはり政権は任せられない」と見放すに違いない。・・・
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 両紙とも、「テロ特措法延長問題」を「臨時国会の焦点」と認識し、民主党に翻意を促していますが、民主党が無責任政党でない限り、選挙で勝てばこうなることは当然の帰結です。

 両紙は選挙期間中に「テロ特措法問題」が選挙の争点だとは言っていませんでした。それなのになぜ、選挙が終わった今になって、急に「最大の焦点」だと言い出すのでしょうか。そのような重大問題と認識しているのなら、なぜ選挙期間中に有権者に対して問題の存在を知らしめようとしなかったのでしょうか。両紙は選挙に際して、有権者に対して「争点」を隠していたと言われても仕方がないと思います。

 産経新聞は、「有権者の多くが『やはり政権は任せられない』と見放すに違いない」と言っていますが、推測でものを言ってはいけません。有権者が見放すかどうかを決めるために選挙があるのです。その選挙で争点を隠していたのでは、選挙が有効に機能するはずがありません
自らの「争点隠し」が招いた今回の事態に対して、民主党に対して「翻意」(有権者への背信)を迫るのは、民主主義の根本原理である「有権者の意向の尊重」などは、屁とも思っていない新聞業者の体質が如実に表れていると思います。

 「テロ特措法延長問題」は選挙中は全く取り上げられることが無く、選挙が終わるやいなや急に「焦点」に浮上しましたが、反対に、選挙期間中は「最大の争点」とされていたにもかかわらず、選挙が終わるやいなや紙面から消えてしまったのが「年金問題」です。年金問題は読者(有権者)を欺くための
「おとり争点」だったという他はありません。

平成19年8月5日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ