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新聞販売の「巨大量販店」を

 昨年12月26日の産経新聞は、「食品vs.流通 値上げ攻防 スーパー2強『価格凍結』宣言」という見出しで、次のように報じていました。
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 原材料価格の高騰に伴う食品値上げをめぐり、流通大手とメーカーの攻防が激しさを増してきた。大手スーパーはほとんど店頭価格を上げていないうえに、イオンが25日、メーカー商品の割引価格を据え置く「価格凍結宣言」キャンペーンの第2弾を始めるなど対決色は濃い。ただ、コンビニエンスストアでは値上げが浸透し、スーパーにも価格引き上げの動きが広がり始めた。・・・

 流通大手が店頭価格の引き上げに躊躇(ちゅうちょ)するのは、こうした現場感覚に基づく消費者離れへの危機感があるからだ。
 イオンとセブンの2強は圧倒的なバイイングパワー(購買力)でメーカーとの価格交渉を優位に展開。「物流や宣伝広告などでメーカー側にコスト削減余地があれば、卸価格の値上げそのものを拒否している」(流通業界関係者)という。
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 メーカー、流通業者、消費者の3者の力関係を考え、どのような関係が消費者の利益になるかを考える時、今回の記事は非常に示唆に富んでいます。
 流通企業が巨大化し、メーカーに対して強い立場になることは、消費者の利益になると言うことです。

 電気製品が安く買えるようになったのも、ひとつの店で各メーカーの商品を選べるようになったのも、メーカーによる系列販売が崩れ、大規模な家電量販店が市場を支配するようになり、メーカーが激しい競争を強いられるようになったからです。メーカーが市場を支配する力を失ったからです。これは、独占禁止政策によりメーカーの流通支配が排除されたからです。

 このような認識に立って、新聞流通業界を眺めてみると、スーパーが大手企業で強大であるのに対して、新聞宅配業者は比較にならない零細業者です。なぜ、集約が進まないのでしょうか。それは、他の業界と異なり、新聞業界(メーカー)が政治力により、再販特殊指定を初めとして、独占禁止法の適用を免れ、新聞販売業界の自由を奪い、彼らを支配下においているからです。新聞販売業者は、市場経済の原理に反して零細企業であり続けることを強いられているのです。そのため、彼らと新聞メーカーの力関係は、全く一方的で、服従を強いられています。彼らがメーカーに対して値上げを拒否したり異を唱えたりすることはできません。このような状態が消費者の利益を損なうことは明らかです。

 新聞販売業者の集約が進み、大規模化が進み、複数のメーカーとの取引が一般化し、メーカーに対抗できるだけの力が備われば、価格についてはもちろん、サービスも競争が激化することが期待できます。新聞休刊日はなくなり年中無休となるでしょう。ヤクザまがいの販売拡張員が姿を消すことは必定です。価格・サービスの競争激化は、必然的に中身の競争を促し、消費者の趣向にあった紙面が期待できます。また、新聞業界への新規参入は、一から独自の宅配網を作る必要がなくなるため、極めて容易になります。

 新聞業界に独占禁止法を例外なく適用し、新聞販売の「量販店」を出現させることが、消費者の利益にかない、言論の自由を実現する道だと思います。

平成20年1月20日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ