A136
田母神論文を報じる朝日新聞は「報道機関」ではなく、北朝鮮の新聞と同じ「宣伝機関」と言うべきである

 11月2日の朝日新聞は、「空幕長更迭−ぞっとする自衛官の暴走」と言う見出しの社説で、次のように論じていました。少し長く無なりますが、全文を引用します。
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空幕長更迭―ぞっとする自衛官の暴走
 こんなゆがんだ考えの持ち主が、こともあろうに自衛隊組織のトップにいたとは。驚き、あきれ、そして心胆が寒くなるような事件である。

 田母神(たもがみ)俊雄・航空幕僚長が日本の植民地支配や侵略行為を正当化し、旧軍を美化する趣旨の論文を書き、民間企業の懸賞に応募していた。

 論文はこんな内容だ。

 「我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者」「我が国は極めて穏当な植民地統治をした」「日本はルーズベルト(米大統領)の仕掛けた罠(わな)にはまり、真珠湾攻撃を決行した」「我が国が侵略国家だったというのはまさに濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)である」――。

 一部の右派言論人らが好んで使う、実証的データの乏しい歴史解釈身勝手な主張がこれでもかと並ぶ。

 空幕長は5万人の航空自衛隊のトップである。陸上、海上の幕僚長とともに制服の自衛官を統括し、防衛相を補佐する。軍事専門家としての能力はむろんのこと、高い人格や識見、バランスのとれた判断力が求められる。

 その立場で懸賞論文に応募すること自体、職務に対する自覚の欠如を物語っているが、田母神氏の奇矯な言動は今回に限ったことではない。

 4月には航空自衛隊のイラクでの輸送活動を違憲だとした名古屋高裁の判決について「そんなの関係ねえ」と記者会見でちゃかして問題になった。自衛隊の部隊や教育組織での発言で、田母神氏の歴史認識などが偏っていることは以前から知られていた。

 防衛省内では要注意人物だと広く認識されていたのだ。なのに歴代の防衛首脳は田母神氏の言動を放置し、トップにまで上り詰めさせた。その人物が政府の基本方針を堂々と無視して振る舞い、それをだれも止められない。

 これはもう「文民統制」の危機というべきだ。浜田防衛相は田母神氏を更迭したが、この過ちの重大さはそれですまされるものではない。

 制服組の人事については、政治家や内局の背広組幹部も関与しないのが慣習だった。この仕組みを抜本的に改めない限り、組織の健全さは保てないことを、今回の事件ははっきり示している。防衛大学校での教育や幹部養成課程なども見直す必要がある。

 国際関係への影響も深刻だ。自衛隊には、中国や韓国など近隣国が神経をとがらせてきた。長年の努力で少しずつ信頼を積み重ねてきたのに、その成果が大きく損なわれかねない。米国も開いた口がふさがるまい。

 多くの自衛官もとんだ迷惑だろう。日本の国益は深く傷ついた。

 麻生首相は今回の論文を「不適切」と語ったが、そんな認識ではまったく不十分だ。まず、この事態を生んだ組織や制度の欠陥を徹底的に調べ、その結果と改善策を国会に報告すべきだ。
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 朝日新聞は、「ゆがんだ考えの持ち主」、「一部の右派言論人」、「実証的データの乏しい歴史解釈」、「身勝手な主張」、「奇矯な言動」、「歴史認識などが偏っている」などと言って田母神幕僚長を非難していますが、ほとんどが根拠の提示のない感情的な主張で、田母神論文のどこが、なぜいけないのかという指摘は全くありません。

 「ゆがんでいる」かどうかは人により見方が異なります。「右派」と左派はどのような基準で分けるのか、人は右派であってはいけないのか、「一部」とは何を指すのか、全く訳がわかりません。「実証的なデータが乏しい」のはこの社説であって、人のことは言えません。「身勝手」、「奇矯」も同様です。何の根拠も示さない「変人」扱いは、かつて旧ソ連が反体制知識人を「精神病」扱いした手口を彷彿とさせます。朝日新聞の報道が「偏ってる」という批判を、朝日新聞は受け入れるのでしょうか。

 要するに朝日新聞の非難はきわめて非論理的な非難で、「侵略ではなかった」という主張に対して、「侵略」であったことを前提に非難しているに過ぎません。そして、その前提が正しいことを示す主張はどこにもありません。「中・韓」がどうだとか、「アメリカ」がどうだとかは、前提が正しいと言う根拠にはなりません。これでは自分の気に入らない意見に出会ったときに、「妄言!」の一語を発するだけで、内容のある反論ができない韓国人と大差ありません。

 この記事を読んでも読者は田母神幕僚長の歴史認識が、正しいか誤っているか自分で判断することができません。朝日新聞は11月1日から11月3日にかけて「asahi com」で多数の関連記事を掲載しましたが、田母神幕僚長の歴史認識のどこが、どのようにゆがんでいるのかを指摘するものは一つとしてありません。何の指摘もないままに、「文民統制」とか「日本の国益」とか、飛躍した議論を展開しています。

 読者は自分で是非を判断する情報を提供されないまま、新聞社の判断−田母神幕僚長の歴史認識はゆがんでいる−だけを繰り返し読まされることになりますが、このような報道はまっとうな報道といえるのでしょうか。
 田母神幕僚長は今回の騒動が起きた後で、「反論が許されないの北朝鮮と同じだ」という趣旨の発言をしていましたが、
朝日新聞の報道はまさに北朝鮮の報道機関と同じです。読者の判断のために必要な情報を提供することなく、ひたすら相手に対する罵倒を繰り返し、読者が考える余地を与えない・・・。これはもう、報道機関というよりも、宣伝機関というべきだと思います。

平成20年11月8日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ