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死刑廃止論はどこへ行った

 オウム事件で坂本弁護士一家三人を殺害した、岡崎一明被告に死刑判決が言い渡されました。判決をトップニュースで伝える10月23日の朝日、読売、産経各紙の夕刊を見ると、どのページを見ても「死刑廃止論」の立場からの記事、解説、「識者の話」が見あたりません。年に数回死刑が執行される度に大々的に死刑反対の記事を書き、死刑廃止論者の意見を報道するのに、死刑判決が言い渡されたときに沈黙するのはなぜでしょう。アムネスティ・インターナショナル日本支部の方たちはなぜ抗議しないのでしょうか。事件の記憶が生々しい間は抗議せず、ほとぼりが冷めた頃に死刑反対を主張するのでしょうか。それとも、本当は抗議しているのに、新聞社が黙殺しているのでしょうか。いずれにしても不可思議なことです。
 死刑廃止論は、「死刑は殺人である」、「死刑は残虐な刑罰である」と言うことを論拠にしています。そうであればいかなる事件、いかなる被告人に対しても死刑反対の主張がされるはずで、例外はないはずです。今回の判決に沈黙する理由がありません。その時によって主張したり、しなかったりというのは、ご都合主義で彼らの主張がまやかしであることを意味していると思います。

平成10年10月24日     ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る     A目次へ