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原発停止、無法と無責任に支配される日本

 原発の停止は、企業に大きな損害を与えています。電力会社は火力発電の比重が高まり、コストが上昇し、しかも売り上げは減少するという大きな打撃を被っています。一般の製造業においても、電力の節減はコストの上昇、売り上げの低迷と言う損害を受けています。
 これらの損害は企業が泣き寝入りするしかないのでしょうか。

 企業だけではありません。原油と天然ガスの輸入急増によって、貿易収支は巨額の赤字となっています。二酸化炭素の排出が増加していることは誰も指摘していませんが、間違いありません。

 言うまでもありませんが、原子力発電所が震災の被害を受けたのは東京電力と東北電力だけです。他の電力会社が原発停止を余儀なくされているのは、すべて人為的な要因です。

 多くの原発が稼働停止状態に陥っているのは、定期検査後の再稼働を地元の知事が認めないからです。
 まずその点ですが、知事に原発の再稼働を許可したり許可しなかったりする権限があるのでしょうか

 6月12日の産経新聞は、「広がる電力不足 原発再稼働で危機回避を」と言う見出しの記事で、次のように論じています。
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・・・今後さらに深刻化しそうなのが原発の再稼働問題である。

 原発は13カ月連続運転し、その後、3カ月程度の検査に入るルールが定められている。全国には関電保有の11基を含めて54基の原発があるが、このうち計35基が現時点で運転を停止している。

 この中には、東日本大震災で停止したままの福島第1や首相要請で停止した浜岡なども含まれるが、検査を終えながら地元了解が得られず再稼働できないままになっている原発も少なくない。

 
原発の再稼働に地元の同意は法律上は必要ないが、電力会社は地元市町村や県と安全協定を結んでおり、実質的に地元が関与している。地元との協議を電力会社に丸投げしてきた国の責任は重い。

 現状の「検査ルール」でいけば、来夏までに国内すべての原発が止まる。原発は日本の電力需要の約3割を賄っており、全面停止となった場合の日本経済への影響は計り知れない。震災復興にブレーキをかけ、国際的な産業競争力を失いかねぬ事態は、何としても回避すべきだ。
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 この記事は、「地元の同意は法律上必要ない」と言いつつ、「電力会社は地元市町村や県と安全協定を結んでおり、実質的に地元が関与している」と言っていますが、肝心の協定の内容を報じていないので、読者には、知事の不同意が根拠のある行為なのか否か判断できません。その点を正確に報道しているマスコミは皆無です
 肝心な点、原発再稼働の可否について根本的なことを何も論じないで、自動車メーカーが土日操業を始めたとかそのための託児所ができたとか、対症療法的なことばかり報じています。

 私の理解するところでは、知事に法的な裏付けのある権限はないようです。
権限のないものが許可しないと言うのは、電力会社に対する営業妨害ではないのでしょうか。彼等の妨害によって多大な損害を被りながら、それに対して効果的な対抗策をとらないのは、株主に対する背信になるのではないのでしょうか。
 彼らの妨害により、節電を強いられ、業績に多大な影響を受けている企業は損害賠償請求すべきではないのでしょうか。

 彼らがこのような行動に出た原因は、総理大臣である菅直人が中部電力に対して、浜岡原発の停止を「要請」するという暴挙に出たことに端を発していると思います。
 本来であれば、国全体の経済運営に責任を負うべき政府が、知事らの行動にブレーキをかけなければなりませんが、政府が真っ先に無法な「要請」をしてきっかけを作ったわけですから、これを見習った各地の知事達の暴挙に対して、政府が責任ある行動が取れるはずがありません。

 かくして、今の日本は何の権限もない知事が原発の再稼働を妨害して、企業や国民経済に大損害を与えつつ、それに対して政府はただ傍観するのみと言う、
無法・無責任極まる状態に陥っていると思います。

平成23年7月4日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ