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日本の新聞市場ではなぜ新規参入がないのか
9月2日の産経新聞は、「電力会社、取引所経由の売買義務化 送電網独占、自由化の遅れも障害」という見出しで、次のように伝えています。
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日本の電力市場で発電事業者の新規参入が進まない背景には、電力会社が送電網を独占していることもある。新規事業者は発電した電力を契約者に届けるために送電網を保有している大手電力に「託送料」を払わなければならず、採算が合わないためだ。
この結果、「最新の設備を持つ新規事業者は電力会社よりもコストは安い」(関係者)という強みを発揮できないでいる。
新規事業者にとっては、数百億〜1千億円もかかる発電所の建設費も重い負担だ。設備が足りずに電力を販売する契約者を増やせないというケースは多い。このため、「電力会社から足りない電力を安値で調達し、契約者に回せる制度などが必要」(新規事業者)との声が出ている。・・・。
(中略)
富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員は「政府が競争政策を導入して市場原理が働くようになれば、新規参入業者が増え、電力供給はサービス業に進化する」と指摘している。
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要するに「自由な流通」が確保されていなければ、いくら製造を自由化しても自由化は進まないと言うことです。
これは、まさしく現代日本の新聞市場に当てはまります。上記の記事の「電力」の部分に「新聞」を当てはめると見事に当てはまります。
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日本の「新聞」市場で「新聞発行」事業者の新規参入が進まない背景には、「新聞」会社が「宅配網」を独占していることにある。新規事業者は「新聞」を契約者に届けるために一から宅配網を新設しなければならず、採算が合わないためだ。・・・
新規事業者にとっては、○○億円もかかる「宅配網の新設」は重い負担だ」
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わが国は建前上は言論の自由、出版、報道の自由が確保されています。しかし、実態上は日本の市場は大手企業の寡占状態で、新聞市場への新規参入の道は閉ざされています。
それはなぜかというと、新聞の流通が大手新聞企業によって、押さえられていて、自由な新聞の流通市場が存在しないからです。
下表に示されるとおり、日本の新聞社の発行部数は異常に巨大です。北海道や名古屋では際だって異常です。これは新聞市場が不健全であることを何よりも雄弁に物語っています。
表1 世界の主要新聞発行部数比較
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-mediaron2.htm
新聞名 推定発行部数(出典1) ( 出典2)
1 読売新聞 1016万部 10,044,990
2 朝日新聞 826万部 8,241,781
3 毎日新聞 394万部 3,931,178
4 日本経済新聞 296万部 2,820,347
中日新聞 2,747,683
サンケイ新聞 2,058,363
5 USAトゥデー(米) 167万部
6 北海道新聞 120万部 1,233,170
7 ニューヨークタイムズ(米) 107万部
西日本新聞 846,566
8 ワシントンポスト 78万部
静岡新聞 738,599
9 ザ・タイムズ(英) 73万部
中国新聞 721,174
東京新聞 613,099
10 神戸新聞 52万部 560,175
河北新報 505,437
京都新聞 503,506
新潟日報 498,743
信濃毎日新聞 476,966
11 ガーディアン(英) 39万部
12 ル・フィガロ(仏) 38万部
13 ル・モンド(仏) 37万部
14 ディー・ウェルト(独) 30万部
出典:
1)『週刊金曜日』−1997年10月17日号・黒薮哲哉
外国紙は1996年・日本紙は1997年の調査
2)都道府県別新聞発行部数 2003年1−6月「社団法人ABC協会」「社団法人日本新聞協会」調べ
平成23年9月4日 平成23年9月4日 ご意見ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ