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新聞社の強固な反株式会社思想 −保育所に株式会社が参入−


 5月2日の読売新聞は、「認可保育所に株式会社 厚労省、参入前倒しを通知へ」という見出しで、次のように報じていました。
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 厚生労働省は、待機児童の解消に向け、認可保育所への株式会社参入を前倒しで認めるよう、全国の自治体に通知する方針を決めた。2日午前に開かれた政府の規制改革会議(議長=岡素之・住友商事相談役)で明らかにした。株式会社の参入により保育の受け皿拡大を目指す。
 現在でも株式会社は認可保育所に参入できるものの、自治体によっては、経営状況で保育の質が左右されることを懸念して認めないケースがある。2015年4月の子ども・子育て支援3法施行後は、株式会社を理由に認可を拒めなくなる。厚労省の通知は、同法施行をまたずに自治体に前倒しで対応を求めるものだ。
 2日の規制改革会議は、保育士登録の申請から登録証交付まで現在2か月かかる期間を短縮することも要請。厚労省は、今年度中に結論を出すと説明した。
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 遅きに失したとは言え、保育所に株式会社の参入を促進することになったのは、一歩前進です。一体なぜ今まで株式会社の参入が阻まれてきたのでしょうか。

 既存の業界、役所が株式会社の参入を阻止せんとする際にあげる理由は、おそらく株式会社は営利に流れ、サービスの低下、悪化を招くというものと考えられますが、もし、それが本当ならば保育所に限らず、すべての業種から株式会社を閉め出さなければなりません。

 しかし、実際にはほとんどの業界で、自動車の製造でも、交通機関の経営でも、スーパーマーケットの経営でも、株式会社は公営企業や個人商店よりも、より良い商品、サービスを低廉な価格で提供しています。
 劣悪なサービスを、税金で赤字を補填しつつ提供しているのは公営企業の方です。非営利を標榜する医師会がカルテル行為に手を染めることはしばしば報じられています。
 無償のボランティア活動でもない限り、人は皆収入を得るために働いているのであり、株式会社だけを「営利」と決めつけるのはきわめて不当です。
「非営利」は怠け者の隠れ蓑です。

 株式会社の参入が待たれるのは保育所に限りません。まず、
病院などの医療機関、私立学校、弁護士(法律事務所)、農業などに株式会社の参入が必要です。これらの業界では非効率がはびこり、消費者により良い商品・サービスを低廉な価格で提供すると言う使命を果たしていません。
 いや、それ以外にも、ほとんどすべての業界で株式会社の参入が望まれます。参入阻止を正当化する理由はありません。近年質の低下が著しい警察・消防業務にも、株式会社が参入する余地はあると思います。

 しかるにこの種の規制緩和、株式会社の参入は遅々として進みません。既存の業者団体が競争を嫌い、既得権を守ろうと水面下で必死で激しく抵抗するからですが、それだけが理由ではありません。
 新聞は保育所や介護施設などの小規模な非営利企業(社会福祉法人など)の非効率な経営実態を報じません。株式会社、大企業の参入がもたらすメリットを報じません。なぜでしょうか。

 新聞社は株式会社であるにもかかわらず、
株式会社である事を徹底して隠しています。株式会社 朝日新聞社」とか、「株式会社読売新聞東京本社」とかの表示は紙面のどこを探しても見当たりません。新聞社自身が株式会社であるにもかかわらず、強烈な「反株式会社思想」に固まっているのです。

平成25年5月17日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ