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“紙”新聞の宅配に固執する日本の大手新聞社−紙とデジタルの抱き合わせ、読者に不便を強いる宅配への執着−


 アメリカでは新聞の電子版がかなり普及しているようですが、日本ではきわめて不十分の状況です。大手新聞社の電子版の価格(月極購読料)は下記の通りです。

 
       紙の朝夕刊    電子版のみ    紙+電子版
  日経    4,383円     4,000円     5,383円
  朝日    3,925円     3,800円     4,925円
  読売    3,925円         なし         なし
  毎日    3,925円         なし         なし
  産経    3,925円       315円         なし



 これを見てまず気がつくことは、以下の3点です。
  
1.日経と朝日の電子版は値段が高く、反対に産経は非常に安い
  2.読売と毎日は未だに電子版を発行していない
  3.日経と朝日は紙と電子版の重複販売があり、割安価格が設定されていて、両社はそれを勧めている。

 
 日経の例で言えば、紙の朝夕刊は4,383円で、電子版が4,000円で差額は383円、朝日は紙の朝夕刊が3,925円電子版が3,800円で、
差額はわずか125円ですが、なぜこう言う価格体系になるのか、コスト計算に基づくものなのか疑問があります。

 紙の新聞は電子版に比べて、印刷、輸送、
宅配と非常にコストがかかるはずです。このことは新聞社が値上げの都度その理由として宅配の維持を挙げていたことからも明らかです。宅配網の維持にコストがかかるのであれば、電子版はもっと安くていいのではないでしょうか。

 さらにニュースはスピードが生命です。
紙と電子版ではそのスピードの差は大きく勝負にならないと言って良いと思います。そうであれば新聞社は電子版に注力し、価格体系も将来の電子版化を見据えたもの(低廉な料金)としてもいいのではないでしょうか。

 以上の二点を考えるといかにも
電子版は高すぎます。この価格体系はコストの差を反映したものではないし、将来の電子版時代の到来を見据えたものとは到底思えません。

 一体なぜ日経と朝日の電子版は高いのでしょうか。ここで注目すべきは産経の安さです。産経は特徴のある新聞ですが、ブランド力、販売網共に朝日・読売に比較して非力であり、全国展開はできていません宅配網が弱い新聞にとっては電子版はその不利を補う有力な手段となります。
 一方で宅配網が強力な新聞はその強みを手放したくないために、
電子版の時代が到来することを望まず、紙新聞・宅配の時代が長く続くことを望んでいるのです。巨大部数を支えるパワーの源泉が紙面ではなく宅配網である事を知っているのです。

 そのために朝日と日経の電子版単品は高額で、電子版の読者には紙新聞との抱き合わせを勧め、読売新聞に至っては電子版の発行すらしていないのです。
 読売・朝日などは宅配に執着しています。そして、宅配に執着するのは決して読者の利便を考えてのことではないのです。いや、むしろ
宅配への執着は読者に不便を強いていると言えます。

平成25年9月1日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ