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朝日新聞の世論調査は「世論操作」

 11月22日朝日新聞に同社の世論調査の結果が報じられました。記事の見出しで、「長銀処理『納得できぬ』7割」と言うのを見て、何かおかしいと思いました。質問票は「・・・あなたは長銀の国有化に納得できますか。納得できませんか。」となっています。さて、「納得」とはどういう意味なのでしょうか。世論調査では余り聞き慣れぬ言葉です。事実、今回の世論調査で全部で17ある質問の中で「納得できますか?」という質問はこの質問のみです。別の質問で、例の一人2万円の商品券については、「あなたはこの商品券配布に賛成ですか。反対ですか。」と聞いています。

 通常この種の質問は「賛成ですか」、「反対ですか」と聞くものだと思います。「納得できる」と「賛成する」、「納得できない」と「反対する」とではどう意味が違うのでしょうか。
 「納得できる」と「賛成する」とを比べれば、「納得できる」と答える人は全員が「賛成する」と答えると思います。逆に「賛成する」と答える人の中には「納得はできない」が「信用制度を維持するためにはやむを得ない、反対できない」と考えるという「消極的賛成」もはいると思います。つまり、「賛成する」は「納得できる」より多くなると思います。逆に「反対する」と「納得できない」を比べれば「反対する」と答える人よりも「納得できない」と答える人の方が多くなると思います。

 そして朝日新聞がわざわざ言葉を選んで「納得できる」、「納得できない」という質問をしたねらいはここにあると思われます。そうでなければこの質問に限って「納得できる」、「納得できない」と言う質問にした理由がありません。商品券については、「あなたはこの商品券配布に賛成ですか。反対ですか。」と聞いていますが、なぜ、この質問は「納得できますか。納得できませんか」と言う質問ではないのでしょうか。それはこの質問に関しては、否定的な回答が多くなることを期待していなかったからであると思います。

 「納得できる、できない」と言う言葉はたぶんに感情的な意味合いがあります。現実の政治においては感情を抜きにして、可能な選択肢のうちどの選択がベストであるかという判断をしなければなりません。「納得できる、できない」の問題ではないのです。納得はできなくても、それ以上の選択肢がなければ、賛成せざるを得ないと言うことは、いくらでもあり得ることです。感情論に訴えるような誘導質問は有害無益です。

 この他にも首を傾げたくなるような質問がたくさんあります。
〇 「あなたは、どの政党が一番好きですか。」
  政党を「好き」、「嫌い」で答えるのはおかしいと思います。
〇 「・・・あなたはこの対策で、景気が回復しそうな気持ちを持てますか。持てませんか。
  気持ちの問題ではなく、有効と思うか、否かの問題だと思います。
〇 「自民党と自由党が連立政権を作るのはよいことだと思いますか。よくないことだと思いますか。
  支持する、支持しないの問題は「よい」、「悪い」の問題ではないと思います。

何気なく見ていると見過ごしてしまいそうな事ですが、よく見ると朝日新聞が「世論調査」ならぬ「世論操作」のために細かい工夫をしていることが分かります。

平成10年11月28日      ご意見・ご感想は  こちらへ     トップへ戻る      目次へ