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トヨタが支払う巨額の“罰金”(和解金)と、それを報じる、読者には何も分からない読売新聞の記事


 3月20日の読売新聞に、「トヨタようやく幕引き リコール和解 経営への影響 限定的」と言う見出しの記事と、「トヨタ
1200億円で和解 大規模リコール 米司法省と」と言う、二つの記事がありました。
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トヨタようやく幕引き リコール和解 経営への影響 限定的
2014年3月20日 読売新聞

 米国で4年以上にわたったトヨタ自動車の大規模リコール(回収・無償修理)問題は、トヨタが総額12億ドル(1200億円)を支払うことで米司法省と19日に和解し、ようやく収束に向かう。トヨタは2014年3月期に本業のもうけを示す営業利益が2兆4000億円に上る見通しで、経営に与える影響は限定的だが、今回を教訓に安全性の問題に一層取り組む必要がある。(山本照明、本文記事2面)
 トヨタの北米現地法人は19日、「
難しい決断だったが、未来に踏み出すための重要な一歩だ」との声明を発表した。米国市場での販売は順調で、幕引きを早く図る意向があったとみられる。
 トヨタは大規模リコール問題で、〈1〉米運輸省と米航空宇宙局(NASA)による欠陥調査〈2〉顧客による大規模な集団民事訴訟〈3〉司法当局による刑事責任の調査——の大きく三つを追及されてきた。
 
米運輸省などはトヨタの自動車で電子制御システムに欠陥はないとの調査結果を11年2月に発表し、「シロ」の判断を下した。集団民事訴訟は、トヨタが原告に11億ドルを支払う和解案で12年12月に合意した。今回の司法当局との和解で、三つの問題とも収束へ向けて峠は越えたといえる。
 トヨタ自動車は2014年の世界販売計画(子会社のダイハツ工業と日野自動車分を含む)を1032万台と、初めて1000万超とした。このうち米国では230万台と、最も多くの新車販売を見込んでいる。
 トヨタは今回の問題で当初、
説明責任を十分果たさず、米国での対応が後手に回って批判を浴びた。大規模リコール問題で浮かび上がった課題は多い。
 
 図=トヨタ自動車の大規模リコール問題をめぐる経緯
 
 写真=トヨタが和解したことを発表するホルダー米司法長官(ワシントン市内で)=安江邦彦撮影
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トヨタ1200億円で和解 大規模リコール 米司法省と
2014年3月20日 読売新聞

 【ニューヨーク=越前谷知子】トヨタ自動車の米国での大規模リコール(回収・無償修理)問題をめぐり、トヨタは19日、総額12億ドル(1200億円)を支払うことで、米司法省と和解したと発表した。米自動車業界が絡む和解額としては、これまでで最大という。
 トヨタは2009年から10年にかけ、アクセルペダルの不具合などで、延べ1000万台以上のリコールや自主改修を行った。検察当局は10年2月、不具合などによるトヨタ車の意図しない急加速について、トヨタが故意に隠蔽していた可能性があるとして、刑事責任の追及を視野に調査に着手していた。
 司法省のホルダー長官は19日の記者会見で、「トヨタの意図的な隠蔽はあった」と指摘。内部調査で不具合を知りながら、リコールを遅らせ、利用者をミスリードした、と結論づけた。トヨタは和解金を支払うことで、刑事責任を免れる
 トヨタは同日の声明で、「4年以上にわたり、原点に戻って、品質向上や迅速な顧客対応に努めてきた」とし、生産体制や品質管理の見直しを進めていたことを強調した。
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 このトヨタ車の「急加速」事件は、記事にもあるとおりトヨタの自動車に「欠陥」はなく、
“シロ”と結論されたものです。それにもかかわらず、1,200億円もの巨額の“罰金”が科されるとは、信じがたい出来事です。また民事訴訟で11億ドル(現在のレートで換算して約1,100億円)と言う巨額の賠償金が支払いを余儀なくされたことも同様に信じがたい出来事です。

 しかるに読売新聞の記事には、その驚きがありません

 
なぜ、4年もかかったのか。トヨタとアメリカの司法当局は何を争ったのか。何がトヨタにとって難しい決断だったのか。トヨタは早く幕引きを図るために、意図しない和解を余儀なくされたのではないのかと言う疑問が生じます。記事を読んでも肝心なことは何も書いてありません。
 経営が順調で巨額の罰金にも堪えられるというこことは、事件の本質とは何の関係もありません。
 巨額の“和解金”は実質的には“罰金”と何ら変わることはありません。正式な罰金であれば、法律に基づき、具体的な証拠に基づき、裁判所が判決により支払いを命じますが、今回のような行政府による処分、しかも根拠が明白な命令ではなく“和解”では、それらがすべて闇の中です。このようなことが法治国家で許されるのでしょうか。このような事態は、悪名高い中国の“人治”政治と変わらないのではないでしょうか。

 「説明責任を果たさず、対策が後手に回った」と、あたかもトヨタに責任があるかのような記事ですが、欠陥がなく、責任がない場合に一体どのような“対策”を取れば良いのでしょうか。読売新聞の記事は読者の知る権利に全く応えていません。

 このようにアメリカ政府の動きに無抵抗・無関心でいることは
日本国民の利益を甚だしく損なっています。さらに憂慮すべきは今後中国がこれを真似して、日本企業に対してユスリ・タカリの行為をすることです。現に中国の当局が「ニコン」に対して、消費者対応の不備を咎めて、販売禁止を命じたと報じられています。

平成26年3月26日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次