A162
少子化対策の破綻と言論の自由がない社会(その2)


 4月5日の読売新聞は、「人口減『社会衰退』74% 『対策速やかに』76% 本社世論調査」と言う見出しで、次のように報じていました。
-----------------------------------------------------------------------------------
人口減「社会衰退」74% 「対策速やかに」76% 本社世論調査
2014年4月5日3時0分 読売新聞

 読売新聞社は人口減少に関する全国世論調査(面接方式)を実施した。日本の総人口が2008年の1億2808万人をピークに減少することへの対策に「政府は速やかに取り組むべきだ」と答えた人は76%に達した。人口減少は「マイナスの影響が大きい」と思う人は79%を占め、危機感を募らせ、政府に早急な対応を求める国民意識が明らかになった。

 人口減少によって「生活の質を重視した成熟した社会になる」と考える人は18%にとどまり、「経済成長を望めず衰退した社会になる」が74%に上った。

 人口が減少する日本の将来について不安に思うこと(複数回答)は「社会保障の負担が重くなる」69%が最も多く、「労働力が減り経済活動が停滞する」57%、「社会全体の活力が失われる」55%、「過疎化が深刻になる」50%などが続いた。

 今後の社会保障については「水準が低下しても税金や保険料が高くならないようにすべきだ」34%、「水準を維持するためには税金や保険料が高くなっても構わない」27%、「どちらとも言えない」37%となった。増大する社会保障費の負担は「高齢、現役世代ともに増やす」60%、「現役世代を増やす」15%、「高齢世代を増やす」10%だった。

 人口が減り続ける中で労働力を確保するため「働く女性の比率を増やすべきだ」と思う人は82%、「働く高齢者の比率を増やすべきだ」も77%に上った。外国人労働者を「もっと受け入れるべきだ」と思う人は37%で「そうは思わない」54%が多かった。「もっと受け入れるべきだ」と答えた人に、どのように受け入れるのがよいかを聞くと「専門的な技術や技能を持った人を受け入れる」44%、「仕事の内容に関係なく受け入れる」43%、「単純労働者を受け入れる」10%となった。

 調査は2月22〜23日に行った。
-------------------------------------------------------------------------------------

 人口減少問題とは、少子化問題と同義で有り、今に始まった問題ではありません。この問題については、読売新聞はじめ、マスコミ各社は今までも熱心に論じてきた問題です。そして、その対策とし保育所の増設や育児休暇の創設に代表される様々な「少子化対策」が実施されてきました。多分20年ぐらい前から、巨額の予算を投じて「少子化対策」が実施されてきたはずです。
 しかるに今回の読売新聞の記事は、その少子化対策には一言も触れていません。なぜでしょうか。それは、少子化対策が惨憺たる失敗に終わったからです。失敗に終わった少子化対策の旗振りをしていた読売新聞は、その過ちを認めたくないのです。

 少子化問題、人口問題は、目先の労働力の問題ではありません。高齢者を雇用するとか、女性を雇用するとか、移民を受け入れるとかは
目先のことだけを考えた姑息な議論で有り、問題の解決にはなりません。出生率が向上しない限り、いくら高齢者を雇用しても、女性を雇用しても、人口減少は止まりません。一時しのぎに過ぎません。そんなことはわかりきったことです。

 移民の受け入れと言いますが、一体どれぐらいの移民を想定しているのでしょうか。100万人でしょうか、200万人でしょうか、それとも
1000万人でしょうか。出生率が向上しない中で、人口減少を移民で補おうとすれば、いずれ日本は移民だらけの国となることは必至です。

 まともな対策としてはも
出生率の向上しかないのです。いかに、出生を向上させるかという議論をすべきであるにもかかわらず、読売新聞は、議論をはぐらかしています。それは、自らの主張してきたことの誤りを認めたくないからです。彼等は、日本国の将来よりも、新聞社の今日、明日のことの方が大事なのです。自らの誤りを認めたくないために、国民の不安と危機感だけを煽り、国民を「移民やむなし」に誘導しようとしています

 我々は、20年以上にわたって少子化対策を実施してきました。しかし、それは何の効果もなかったばかりかかえって少子化を促進してきました。なぜでしょうか。
 そもそも少子化がなぜ起きたか、原因を考えなければなりませんが、それがなされていませんでした。
少子化の原因は結婚しない人、結婚できない人が増えたからです。これは単純明快な事実ですが、これはひた隠しにされました。

 原因の究明がされることなく、
少子化との関係や対策としての効果に疑問のある対策ばかりが実行されました。それが、保育所の増設、育児休暇の創設に代表される「共働き女性」に対する各種の支援策です。これらの支援策が何の効果もなくむしろ逆効果であり、失敗であったことは明らかです。少子化の原因が結婚しない人が増えたことである以上、失敗は当然です。
 すでに
子供のいる共働ぎの主婦に補助金を与えたところで、子供が増えるはずがありません釣った魚にえさをやっても漁獲が増えないのと同じです。

 では、なぜ結婚しない人が増えたのでしょうか。それは
(共稼ぎの)結婚生活が(特に女性にとって)魅力的ではなくなり、また結婚しなくても生きていける社会になったからです。女性の職業が限られていた時代には、女性は結婚しないと生きていけませんでした。しかし女性の職業選択の幅が広がると、女性は結婚しなくても生きていくことが可能になりました。無理に意に沿わない相手と結婚する必要がなくなったのです。
 男性にとってもこのことはある程度当てはまります。電化製品も、コンビニもない時代は、男性が独身生活を続けることは、きわめて不便でしたが、社会の変化はその不便を大幅に軽減してくれました。

 また結婚生活が二人の共同生活である以上、
結婚には男女ともに最低限の協調能力が求められますが、世の中にはそれを欠く人が一定割合存在します。それらの人は円満な結婚生活を維持できません。独身生活を余儀なくされます。以前であれば結婚しなければ生きていけなかったために、不本意な結婚生活も、実質的には破綻している夫婦関係も存続して、子供が生まれ育ちましたが、現在では破綻は即離婚につながり子供の出生には結びつきません。こうして、結婚しない人(してもすぐ離婚する人)、子供を産まない人が増えたのです。

 結婚しない人を結婚に導く施策を実行すれば、結婚しない人をある程度減少させることは可能ですが、それでも一定割合の人は生涯独身を余儀なくされます。
 以前のように100%に近い人が結婚していた時代ではなくなり、20〜30%の人は未婚(子なし)で人生を終わるのです。
 従って、結婚した一組の夫婦が2人子供を産んでいたのでは、人口は減少の一途をたどります。人口減少を食い止めるためには結婚しない人を減らすだけではなく、
結婚した人の中に3人、4人子供を産む人を増やしていかなければならないのです。

 もはや時間的猶予はありません。直ちに必要な緊急対策を実施しなければなりません。対策とは、まず、結婚する意思のある人が結婚できる支援制度を充実させることです(この問題について結婚するかしないかは個人の問題で有り、行政が介入すべきでないという屁理屈をほざく人たちがいますが、そういう人たちからは、個人生活に関わるすべての福祉の恩恵を剥奪すべきです)。

 次に、
3人目、4人目の出産を奨励することです。夫婦の中には経済的な事情が許せば、3人目の子供を望んでいる人は少なくありません。手厚い補助金を子供の大学卒業年齢まで支給することを保証すれば十分可能です。共働き、専業主婦の別を問わず、健康であれば母親の年齢も問わずに実施すべきです。

 反対に、必要な費用を捻出するために、少子化対策として実施された各種の
効果がなかった対策(保育所や、育休制度などへの税金の投入)は、必要の有無を問わず一旦廃止すべきです。
 低所得者対策として必要であれば、改めて別の新制度として整備することとし、少子化対策としては廃止すべきです。

平成26年4月11日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ