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反日の原点 占領下の日本のマスコミ −プランゲ文庫展を論じる国末憲人記者−

 12月3日の朝日新聞夕刊に、米メリーランド大学の「プランゲ文庫」収蔵品展が早稲田大学で開かれることを報じる、「GHQ検閲文書集めた『プランゲ文庫』展」「占領期の“言論”克明に」と言う記事がありました(下記参照)。記事の中で朝日新聞は「敗戦で言論の自由を得た民衆の生き生きとした姿が伝わる」と言っていますが、これは事実に反します。占領下に言論の自由はありませんでした。あったのは、日本政府を批判する自由であって、これは言論の自由ではありません。

 占領下においては、日本政府は既に権力者ではなく、日本に君臨していた真の権力者はGHQでした。従って言論の自由があったかどうかは、日本政府に対する批判が自由であったか否かではなく、GHQに対する批判が自由であったか否かで考えなければ意味がありません。GHQは自らに対するいかなる批判も絶対に許しませんでした。新聞も、雑誌も、書籍も、信書も、ラジオ放送も徹底した検閲を受けました。その徹底ぶりは、記事にあるようにGHQの方針に合わないものは、たとえ川柳や風刺画さえも許さなかったことからも容易に理解できます。そして、一方で日本政府に対する批判は奨励しました。敵である日本政府に対する批判を解禁し、それを奨励したのは、それが占領政策の遂行、日本の弱体化に好都合であったからに他なりません。

 検閲により掲載を禁じられた例として、川柳の「貞操の民主化娘またはらみ」「神様も地獄に堕ちる民主主義」が紹介されていますが、この川柳で日本人が揶揄し風刺しようとした対象は「民主主義」ではなくて、民主主義を大義名分とし、それを隠れ蓑にして日本の解体を進める占領軍と、それに迎合する一部日本人であることは容易に読みとることができます。占領政策に対する公然の批判が禁じられている中で、一七文字に託して精一杯の批判をする川柳が「民主主義を揶揄している」として検閲により削除されたり、「占領政策を皮肉る風刺画」の掲載が差し替えを命じられる社会のどこが「言論の自由を得て生き生きとしている」のでしょうか。生き生きしだしたのは、「もんぺを捨てよう」と呼びかけたり、北海道の独立を主張したりした、現代の「反日日本人」の元祖達だけではなかったでしょうか。

 占領軍が禁止したのは「揶揄」や「風刺」だけではもちろんありません。GHQや戦勝国に対する批判はもちろん、「憲法改正」、「東京裁判」に関する批判的な意見はすべて禁止されました。それだけではありません。占領軍兵士の暴行等の犯罪、占領軍兵士と日本女性との交渉等、自分たちに都合の悪いことはすべて新聞掲載を禁じられました。プランゲ文庫を調査した江藤淳は、その著作「閉ざされた言語空間」で占領軍の検閲(と言うより“情報操作”)の実態を明らかにしています。朝日新聞の記事の見出しは「占領期の『言論』克明に」となっていますが、この記事では占領軍の広範で徹底した、表には出なかった陰湿な検閲の実態はちっとも克明になってはいません。

 朝日新聞はそれらの徹底した検閲の事実に目をつぶり、占領下の日本の言論が自由であったとか、「『民主主義』の信奉者となる市民(“もんぺを捨てよう”とか、北海道の独立を主張した人たちを指すのでしょうか)が続々登場する風潮をちゃかすメディアも出現。民主主義の定着を狙うGHQが取り締まりに躍起となった」と言って、占領軍の検閲を支持し、正当化しています。

 戦争中の日本政府の検閲は公然と行われましたが、占領軍のそれは、検閲が行われていることを徹底して隠蔽して行われました。
彼らの言う「言論の自由」が欺瞞であることは言うまでもありません。そして、その検閲に対して日本のジャーナリストは誰一人として、抗議も抵抗もしませんでした。己の保身のために平然と国民を裏切り、独立回復後も真実を明らかにせず今日に至っています。これが日本のマスコミの原罪、反日の原点です。

平成10年12月5日     ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ


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平成31年2月17日追記

 ホームページ作成直後に、上記の内容を朝日新聞社にメールで送付したところ、同社広報室から下記の返信がありました。
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RE: 反日の原点 占領下の日本のマスコミ
                            98年12月7日 

安藤 〇〇さま

                     朝日新聞社 広報室 

メールありがとうございます。朝日新聞夕刊に載った「プランゲ文庫展」の記事についてのご意見を読ませていただきました。

さっそく、この記事を書いた筆者に渡し、参考にさせていただきます。今後ともご愛読のほどお願い致します。
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