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大阪に未来はない−大阪都構想、橋下市長の敗北−


 5月18日のNHKニュースは「住民投票は反対多数 橋下市長は引退表明」と言うタイトルで、次のように報じていました。

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ニュース詳細 NHK

住民投票は反対多数 橋下市長は引退表明
5月18日 4時43分

 いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う大阪市の住民投票は、17日に投票が行われ、開票の結果、「反対」が「賛成」を僅かに上回って多数となり、橋下市長が掲げた「大阪都構想」は実現せず、大阪市は存続することになりました。これを受けて、橋下市長は、ことし12月までの任期は全うするものの、次の市長選挙には立候補せず、政界を引退する意向を表明しました。

「大阪都構想」の賛否を問う住民投票の開票結果です。
「反対」70万5585票。
「賛成」69万4844票。
「反対」が「賛成」を1万票余り、得票率にして0.8ポイント上回り、多数となりました。

 今回の住民投票は、大阪市の有権者およそ211万人を対象に行われ、大阪市の橋下市長が代表を務める大阪維新の会が、「大阪府と大阪市の二重行政を解消すべきだ」として「賛成」を呼びかける一方で、自民・公明・共産・民主の各党は、
「コストもかかり、住民サービスも今より低下する」などとして「反対」を主張し、激しい論戦が繰り広げられました。

 その結果、「都構想」は一定の賛同を得たものの、
「大阪市の存続」を求める意見も根強く、「反対」が「賛成」を僅かに上回って多数となりました。これにより、大阪市はそのまま存続することになり、橋下市長が掲げた「大阪都構想」は実現せず、5年にわたる議論は決着しました。
 大阪市選挙管理委員会によりますと、今回の住民投票の投票率は66.83%で、先月、統一地方選挙で行われた大阪市議会議員選挙の投票率を18ポイント余り上回りました。

 今回の結果を受けて、橋下市長は17日夜、大阪維新の会の幹事長を務める大阪府の松井知事と共に記者会見し、「大阪都構想は、市民に受け入れられなかったということで、間違っていたということになるのだろう。僕自身に対する批判もあるだろうし、説明しきれなかった僕自身の力不足だと思う。今の市長の任期まではやるが、それ以降は政治家はやらない。政治家は僕の人生からは終了だ」と述べ、ことし12月までの任期は全うするものの、次の市長選挙には立候補せず、政界を引退する意向を表明しました。
 また、橋下市長は、記者団から、「将来、再び政治家に戻る可能性はあるのか」と質問されたのに対し、「ない。弁護士をやる」と述べました。松井知事は「知事としての残りの任期で、さまざまな問題解決に向けて働きたい」と述べました。

 一方、自民党大阪市議団の柳本顕幹事長は
大阪市を守らなければいけないという思いで活動してきたが、現状を変えたいという橋下氏を中心としたメッセージが、市民の心を揺さぶったのも事実であり、地に足の着いた大阪市政を取り戻すべく、全力を尽くしたい」と述べました。
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 自民党などが反対の根拠にしている、
「大阪市を守る」「コストもかかり、住民サービスも今より低下する」などの主張は、どれ一つとして当たっていないと思います。

 大阪は地盤沈下しています。経済的には大阪に拠点を置く企業は経営不振で、東京との差は広がる一方で、関西の中心としての求心力も弱まっていると思います。
リニア新幹線は名古屋止まりでその先大阪までは詳細未定です。北陸新幹線も金沢から大阪への延伸は詳細未定と言わざるを得ない状況下で、金沢などの従来は関西圏と言われていた地方が、東京に目を向け始めています。
 その一方で、各種犯罪その他の
ワースト・ランキングでは常に上位を占めています。それが大阪の現状です。

 このような現状に大阪市民が危機感を持たずに、将来を考えることなく古き良き大阪に対する郷愁既得権の維持
変革に対する抵抗感だけで現状維持を選択するとは情けない限りです。

 東京の特別区23区の人口が900万人で、それよりも人口が遙かに少ない270万人の大阪市で24区もあるのはどう考えても非効率です。各地で町村合併が進んでいる時に、今の区割りに執着するのはバカげています。これによって利益を得るのは地域の政治家と地方公務員だけだと思います。

 来たるべき大阪都の中心となるべき大阪市が、このような地域感情を膨張させたことは、大阪都の一員となるべき周辺諸市が大阪都の呼びかけに呼応すべくもなく、大阪は求心力を増すどころか求心力を失い、反対に遠心力を増したことは否めません。これは、大阪市民にとってだけでなく、周辺諸市にとっても不幸な結果であったと思います。

 NHKの記事にもあるとおり、選挙戦後半では反対陣営は有権者の地域感情に訴えました。また、あるテレビのニュースでは70歳以上の高齢有権者の多くが反対票を投じたと報じられていました。


出口調査による賛成率(%) (出所:朝日新聞・ABC)

地域感情を煽り、既得権の維持に走って改革をつぶした自民、公明、民主、共産各党の責任は重いと思います。

 住民投票の結果を報じる5月18日の読売新聞には、
「[スキャナー]「大阪都」敗北 橋下劇場が終演 維新に大打撃」という悪意に満ちた大きな見出しが躍っていました。「劇場(政治)」という言葉は、新聞社が気に入らない人気のある政治家を、理由もなく貶める時の決まり文句です。

 橋下市長はマスコミにおもねることなく、時にはマスコミとの衝突を辞さず持論を訴えてきました。これがマスコミに憎まれ今回の結果に至ったのだと思います。今回に限りませんがマスコミいつも改革の目をつぶしています
 大阪はこれからも停滞が続くと思います。またとない貴重なチャンスを潰したと後悔する時が必ず来ると思います。

平成27年5月18日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ

平成27年5月19日追記 (参考)大阪で見えた「老人の老人による老人のための政治」 小さな改革を拒否すると大きな破局がやってくる(JB PRESS 2015.5.19(火)                                          (http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43827)