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いわゆる安保法制の国会審議における、「強行採決」と「世論の尊重」


 安保法制の国会審議で、政府案に反対する野党から、「強行採決」批判や、「世論調査結果」の尊重が主張されています。マスコミもその主張に沿った報道をしています。

 しかし、
強行採決という認識は正しい認識でしょうか。国会の手続きに則り、審議を終えて採決することは当然のことです。しかるに、しばしば採決が混乱の中で「強行」されるのは、野党が「強硬に」採決を阻止せんとし、妨害の挙に及ぶからに他なりません。審議が不十分なのではありません。彼等にとってどれだけ審議すれば十分という基準はもとよりありません。彼等は廃案になるまで採決の延期を主張する人たちです。

 要するに、日本の野党は民主主義の手続きの中で、敗北を認めることができない人たちなのです。彼等の議場からの
退場と与党に対する単独採決非難は、スポーツ試合で言えば、敗北が明らかになると棄権あるいは試合放棄の挙に出て、潔く敗北を認めようとしないのと同じです。これはある意味で精神的な未熟の表れと言わざるを得ません。

 今回の安保法制に限らず、過去の日本の重要法案の多くは強行採決により成立したと言っても過言では無いと思います。その典型が1960年の現行の
日米安保条約の国会承認です。この時の国内の反対運動は今の「安保法制」の比ではありませんでした。この条約も与党の「強行採決」によって国会で承認されたものです。

 しかし今では
日米安保条約に反対する人はごく少数になりました。野党の多くも日米安保体制が日本外交の柱という認識で一致していると思います。このことは一時的な世論の高揚によって道を誤ってはならないという事を教えています。

 1960年の安保反対闘争では、多くの人が傷つきました。当時東大の学生だった樺美智子さんはデモ隊の衝突の中で命を落としました。大変気の毒ではありますが、今となっては何の意味も無い無駄死にだったと言うほかはありません。

平成27年7月29日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ