A179
国境なき記者団のランキングを報じる朝日新聞、「報道の自由」が聞いてあきれる、根拠無き断定(断罪)記事
4月20日の朝日新聞は、「報道の自由度、日本は72位 国際NGO『問題がある』」と言う見出しで、次のように報じていました。
--------------------------------------------------------------------------------
朝日新聞デジタル
報道の自由度、日本は72位 国際NGO「問題がある」
パリ=青田秀樹
2016年4月20日13時03分
国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は20日、2016年の「報道の自由度ランキング」を発表した。日本は、対象の180カ国・地域のうち、前年より順位が11下がって72位だった。特定秘密保護法の施行から1年余りを経て、「多くのメディアが自主規制し、独立性を欠いている」と指摘した。世界的にも報道の自由は損なわれつつあるという。
日本は10年には11位だったが、年々順位を下げ、14年59位、15年は61位だった。「国境なき記者団」はかねて、取材の方法しだいで記者も処罰されかねない特定秘密法に疑問を呈してきた。14年12月に同法が施行された後、メディアが自主規制に動くのは、「とりわけ(安倍晋三)首相に対してだ」とした。
「良い状況」「どちらかと言えば良い」「問題がある」「厳しい」「とても深刻」の5段階では、日本は「問題がある」に位置づけられた。
ランキングは、インターネットへのアクセスなども含めた「インフラ」や「メディア環境と自主規制」といった独自の指数に基づいてつくる。世界全体で、テロの脅威とナショナリズムの台頭、政治の強権化、政治的な影響力もあるような富豪らによるメディアの買収などを背景に、「報道の自由と独立性に対する影響が強まっている」という。
国・地域別の自由度では、最上位にフィンランドなどの北欧諸国が目立ち、北朝鮮、シリア、中国などが最下位グループに並ぶ傾向に変わりはなかった。(パリ=青田秀樹)
■報道の自由度ランキング
(カッコ内は前年順位)
1 フィンランド(1)
2 オランダ(4)
3 ノルウェー(2)
4 デンマーク(3)
5 ニュージーランド(6)
16 ドイツ(12)
18 カナダ(8)
38 英国(34)
41 米国(49)
45 フランス(38)
72 日本(61)
77 イタリア(73)
148 ロシア(152)
176 中国(176)
177 シリア(177)
178 トルクメニスタン(178)
179 北朝鮮(179)
180 エリトリア(180)
------------------------------------------------------------------------------------
記事にあるとおり、「国境なき記者団(以下「記者団」と略します)」が、今年の世界各国の報道の自由度のランキング表を発表しました。今までもそうですが、日本のマスコミの大半は、このニュースを黙殺しています。
今年の「記者団」作成のランキングは、日本が72位と日本人にとって驚くべきニュースですが、各紙で取り扱いが極端に異なります。これに関する各紙の掲載記事の本数は6月7日現在、以下の通りです。
朝日は4月20日以降12本。
読売は0件で完全無視
毎日も 〃 完全無視
産経も 〃 完全無視
日経 記事1本 簡単に報じる
朝日新聞の突出ぶりが目を引きます。
朝日は4月20日のこの記事で、
1.「特定秘密保護法の施行から1年余りを経て、「多くのメディアが自主規制し、独立性を欠いている」と指摘した。」
と書いていますが、自主規制の具体例は示されず、また、特定秘密保護法と自主規制の関係も明確ではありません。
2.「「国境なき記者団」はかねて、取材の方法しだいで記者も処罰されかねない特定秘密法に疑問を呈してきた。」
とありますが、「かねて」とはいつのことなのか、また「疑問を呈してきた」とは具体的に何と言ってきたのか、はなはだ曖昧です。
3.「メディアが自主規制に動くのは、「とりわけ(安倍晋三)首相に対してだ」とした」
として突然安倍首相の名前が登場しますが、これだけのことを言う以上自主規制が安倍首相に対してなされているとする実例、根拠などを示すべきだと思いますが、何も触れていません。
記事は断片的で簡単(断定的)過ぎて、読者はなぜそう言えるのか、「記者団」の主張の当否を判断する材料がありません。一方的な言いがかりに近い書き方です。
朝日の記事は、「記者団」が今回本当に朝日新聞が書いているようなことを言ったのかどうか、よく読むと表現が曖昧でぼかされています。
「特定秘密保護法」と「安倍晋三」を日本のランキング低下の元凶として批判するのであれば、「記者団」が何を根拠にどのように批判しているのか、日本に関する部分の全文か、少なくとも要旨ぐらいは報じる必要があると思います。それらを何も報じることがなく、かつ、いつどのような文書や発言で誰が言ったのか(言ってないのか)すら曖昧な記事は、報道の名に値しないと言って良いと思います。
またマスコミの「自主規制」とは何か、日本のマスコミはなぜ、自主規制するのか、自主規制は政府の責任か、マスコミ自身の問題ではないのか、特定秘密保護法と、自主規制とどういう関係があるのか等、大事な事が何も分かりません。
そもそも特定秘密保護法が成立したのは2013年12月6日で、施行されたのは14年12月10日です。
この間日本のランキングは下記のように変動してきました。
2010.10.20 11位
2011.3.11 (東日本大震災)
2012.1.25 22位
2013.1.31 53位
2014.2.12 59位、
2014.12.10 (特定秘密保護法施行)
2015.2. 61位
2016.4.20 72位
(日本の報道の自由度ランキング 朝日新聞 2016.4.20)
日本のランキングが最高の11位だったのは、麻生政権退陣直後の鳩山由紀夫内閣の時です。その直後に東日本大震災が起きたわけですが、当時の菅直人民主党政権が、原子炉の被害とその程度、悪影響について、真実を隠蔽し、特に外国メディアを情報から遠ざけて彼等の不満を買ったとは当時から言われてきました。
それからランキングの下降が始まるのですが、政権とランキングの下降を結びつけるとするならば、それはどう考えても安倍政権ではなく、菅政権・民主党政権と言うべきです。
少なくとも2014年12月10日施行の特定秘密保護法の影響ではないと思われます。
朝日の記事以外、他紙の多くが「記者団」のランキングを無視をしているところを見ると、「記者団」が理由として挙げているものの多くは、新聞業界に不利なものであると考えられます。あるいは、「記者団」は日本では朝日新聞のみが密接な関係を持ち、他は関係が希薄であるなど、「記者団」の公平性に疑問があるのかも知れません。
報道の自由と言うよりも、読者の知る権利という点から考えると、この方が遙かに重大な問題であると思われます。それを隠して何も報じない朝日新聞が、「報道の自由」を云々して日本政府を批判するのは笑止千万と言うべきです。
平成28年6月22日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ