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記者会見のあり方、記者に発言の権利があるのか −トランプ次期大統領会見 記者の質問さえぎり応酬の一幕も−

 1月12日のNHKのテレビニュースは、「トランプ次期大統領会見 記者の質問さえぎり応酬の一幕も」と言うタイトルで、次のように報じていました。
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トランプ次期大統領会見 記者の質問さえぎり応酬の一幕も
1月12日 2時23分 NHK

 アメリカのトランプ次期大統領は、
メディアの報道を批判していることについて質問しようとしたCNNテレビの記者に対して、「あなたの質問は受けない」と述べて、それでも質問しようとする記者と応酬となる一幕がありました。
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 トランプ次期大統領が、明白に
質問を拒否しているにもかかわらずそれに従わず,食い下がるように発言を続けるCNNの記者の姿は、多くの人がテレビで視聴したと思います。 これについてはNHKをはじめ多くのマスメディアがトランプ次期大統領を厳しく批判していました。

 日本でもこれほどではなくても、記者会見の場で
会見者と記者の険悪なやり取りは,時折目にすることがあります。日本では記者会見の様子がそのまま放映されること自体が少ないので、あまり目立ちませんが決して珍しいことではないかも知れません。

 今回のトランプ次期大統領の記者会見について、ほとんどの報道はトランプ次期大統領の記者に対する振る舞いを批判していますが、記者達の方には問題はないのでしょうか。そもそも記者会見とはどのように位置づけられるものかを、考えてみる必要があると思います。

 言うまでもないことですが、
大統領総理大臣は正当に選挙で選ばれた全国民の代表です。それに対して記者会見で質問したり、発言したりする記者達は国民の代表ではありません。新聞の読者やテレビの視聴者代表でもなければ、マスコミ企業の代表ですらありません。一介の若手担当社員に過ぎません。

 そもそもその
立場に天地の違いがあることを十分認識しなければなりません。記者達の中にはそれを忘れて、会見者に執拗に食い下がったりするものを見かけますが、これは立場をわきまえない無礼・暴走と言うべきだと思います。

 では記者会見とはどうあるべきかと考えると、
記者会見とは本来会見者が国民に訴え、説明する場ですが、国民にわかりやすいように記者の質問に答えるという形を取ったものだと思います。従って質問は多くの国民が関心を持つ質問である事が必要で、質問者は十分心して質問すべきです。もし、これを逸脱した質問があれば、会見者は答えを拒否してもいいし、それでも執拗に発言するものは退席させても良いと思います。

 日本では記者会見を
記者達の会見者追及の場であるかのごとく心得ている,心得違いの記者が見受けられます(これは特に会見が記者クラブの主催である場合に顕著であるように思われます)。
 質問は文字通り質問であるべきで、
記者が自分の考えを述べたり、それに対する会見者の回答を求めたりする場ではありません。そのようなことをするのは議会の役割です。

 テレビを見ているとCNNの記者は、トランプ次期大統領がCNNを批判したのであるから、その記者である自分には当然
反論・反対質問をする権利があると認識しているようでしたが、それは誤りだと思います。
 トランプ氏はこの会見でも日本を批判していましたが、日本政府が(その場で)反論する権利があるとは思えませんし、する気もないでしよう。

 CNNは
反論したければ自社のメディアを使って反論すればいいのです。

 記者会見とは、あくまで記者の質問に答えるという形を取って、会見者が国民に訴え・説明する場である事を肝に銘じるべきであると思います。

 テレビもインターネットもない時代であれば、記者達は何をどうすることも自由でしたが、記者会見の様子がすべてリアルタイムに国民に伝わる時代においては、記者の発言や振る舞いも批判の対象である事を認識すべきです。

 尚、念のために付け加えますが、わたしはトランプ次期大統領に対する数々の批判の当否を論じているのではありません。あくまで記者会見とはどうあるべきかについて一般論を述べたものです。

平成29年1月17日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ