A186
宅配紙新聞がインターネット(SNS)を敵視する理由

    −“大衆”と“市民”はどこが違うのか ポピュリズム(大衆迎合)非難は民主主義の敵−

 4月21日の読売新聞は、「読売新聞 報道と紙面を考える 第18回懇談会」と言う見出しで、次のように報じていました。
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読売新聞 報道と紙面を考える 第18回懇談会 
2017年4月21日5時0分 読売

トランプ政権…事実の見極め責務

 読売新聞東京本社は6日、第18回「報道と紙面を考える」懇談会を開いた。外部の有識者の意見を取材や紙面作りに生かすことが目的で、本社紙面審査委員会が顧問を委嘱する上田廣一、国松孝次、長尾立子の3氏と、海外取材経験が豊富な識者3氏が出席し、「トランプ米政権とメディア」をテーマに意見を述べ合った。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)経由で偽情報が拡散される時代に、新聞がどのような役割を果たすべきかについて議論を交わした。

ポピュリズム的政治 深刻…老川最高顧問・主筆代理 あいさつ

 トランプ政権が発足して2か月半が経過しました。実際に政権が発足すれば現実的な政策を打ち出すとの期待もありましたが、TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱や移民の入国制限という排外主義的な政策を打ちだし、大変な混乱を生んでいます。

 トランプ大統領の支持率は低いものの、3割強の人たちからは熱烈な支持を得ているという特異な現象も起きています。その背景には、
ツイッターなどのSNSで、トランプ政権に有利なことが書かれたフェイク(偽)ニュースがあたかも事実のように伝えられ、ネットで拡散されて、むしろそちらの方が逆に信じられているという前例のない現象があります。

 こういった排外主義的な、また
インターネット時代におけるポピュリズム(大衆迎合主義)的な政治は、我が国やヨーロッパも含めた大きな流れになっており、深刻に受け止める必要があります。

 こうした情勢の中にあって、
新聞の正確な報道は一段と重要になっています。紙媒体とともにネットでもニュースを伝えている報道機関として、それぞれ具体的にどのような役割が求められているのかについて、ご議論をいただければと思います。

(以下略)
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 読売新聞はこの特集記事で、
インターネットのSNSなどの偽ニュースと、ポピュリズム(大衆迎合主義)強引に結びつけて、両者の排撃とインターネットに押されて先細り・衰退傾向が顕著な宅配紙新聞の復権を訴えています。

 さて、ポピュリズム(大衆迎合主義)とは一体何なのでしょうか。そもそも
「大衆」とは何なのでしょうか。非常に曖昧・漠然とした“俗語"であって、この記事に登場する識者や大学教授などが、俗語を使って議論を展開すること自体が不適切だと思います。

 彼等が
否定的な意味で使っている、この「大衆」と言う言葉とは反対に、肯定的な意味に使っている言葉に「市民」と言うのがありますが、「大衆」「市民」はどこがどう違うのでしょうか。彼等は「市民」に迎合してはいないのでしょうか。市民の支持を得んとすることは、市民の意を迎えることですが、この“市民迎合”は問題ないのでしょうか。“大衆”と“市民”の使い分けは、民主主義の否定に繋がる大きな欺瞞と言うべきです。

 わが国の宅配紙新聞、テレビなどのマスコミ産業の市場が公平・公正さを欠き、
自由競争が阻害されているため、巨大企業が多い宅配紙新聞企業に比べて、インターネット(SNS)を通じてニュースを流す事業者・個人は遙かに零細で、そのニュースの中には怪しげなものや、ウソ、誇張が含まれている事は否めないと思います。
 これに対して宅配紙新聞の記事には、露骨なウソはほとんどないと言って良いと思います。彼等はバカではありませんから、
すぐにばれるようなウソは書きません。

 その限りに於いては、宅配紙新聞業者がインターネット(SNS)を批判するのは理のあることですが、彼等の批判にもかかわらず、
インターネット(SNS)が多くの人に支持されているのはなぜでしょうか。それは別の理由があるからです。その理由とは何でしょうか。

 
宅配紙新聞がインターネット(SNS)を通じて拡散されるニュースフェイク(偽)と言って目の敵にするのは、インターネット(SNS)が、彼等宅配紙新聞が報じないこと、隠していることを報じるからだと思います。彼等はウソは書きませんが、自分に都合の悪いことも書きません。読者に必要なことでも、大事な事でも書かずに隠すという情報操作を頻繁に行っています。しかるにインターネット(SNS)はそれらを遠慮無く報じます。多くの人が支持するのはこの点だと思います。
 彼等が隠しておきたい事実は、ひとたびインターネット(SNS)を通じて、表に出されてしまえばそれで一巻の終わりです。
再び封じ込めることは出来ません。これは彼等が力の源泉としている情報操作」に対する大きな障害・脅威になります。

 以上述べたようにインターネット(SNS)のデメリットは決して無視できるほど小さくありませんが、メリットもあるのです。そして我々にとって
メリットはデメリットを遙かに上回ります。これがインターネット(SNS)の大きな存在価値で有り、宅配紙新聞が目の敵にする理由なのです。

平成29年4月25日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ