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朝日新聞はけしからん、マスコミはけしからん・・・。なぜそこから前に進まないのか −今後のマスコミ(新聞・放送)のあり方−

 8月24日の産経新聞は、「【阿比留瑠比の極言御免】民主主義破壊するメディア」という見出しで、「加計(かけ)学園」の獣医学部新設問題をめぐる7月10日の国会閉会中審査のテレビ報道について、次のように報じていました。
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【阿比留瑠比の極言御免】民主主義破壊するメディア
2017年08月24日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面

 ■「2時間33分46秒」と「6分1秒」

 22日付の産経新聞と読売新聞に、民間団体「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」による意見広告「異常に歪(ゆが)んだテレビ報道 視聴者の知る権利が奪われ続けています」が掲載されていた。ご覧になった読者も多いだろうが、そこに示されていた数字は、寒気すら覚えるものだった。マスメディアの現状を考えるうえで、非常に重要なポイントなので、改めて紹介したい。

 ◆守られぬ放送法

 広告は、学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設問題をめぐる7月10日の国会閉会中審査について、テレビがどのように報じたかを検証している。

 それによると、テレビ各局は10日から11日までにこの問題を計30番組で合わせて8時間36分23秒間、報じた。問題なのは、その内訳の極端な偏りである。

 各局は、国会に招かれた参考人のうち「首相官邸によって行政がゆがめられた」と主張する前川喜平・前文部科学事務次官の発言については、計
2時間33分46秒にわたり取り上げていた。ところが、前川氏に反論した加戸守行・前愛媛県知事の発言はわずか計6分1秒原英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員の発言はたったの計2分35秒しか放送しなかった。

 加戸氏は実際に加計学園を誘致した当の本人であり、かつては前川氏の上司でもあった。原氏は獣医学部新設の是非を議論、審査した当事者である。

 にもかかわらず、「岩盤規制にドリルで穴を開けていただいた。ゆがめられた行政が正された」との加戸氏の訴えや、「規制改革のプロセスに一点の曇りもない」との原氏の証言は、テレビでは事実上なかったことにされた。テレビ東京に至っては、加戸氏と原氏の発言を一切報じなかった。

 まさに
「歴史上最悪に属するとみられる偏向報道(視聴者の会事務局長で経済評論家の上念司氏)だといえる。放送法4条は次のように定めているが、守る気はさらさらないようだ。

 「政治的に
公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」

 ◆報道しない自由

 もっとも、これはテレビ局だけの問題ではない。放送法の縛りは受けないものの、7月10日の閉会中審査における
加戸氏の発言に関しては、朝日新聞と毎日新聞も、記事本文中では1行も触れなかった。

 テレビも新聞も、事実や読者・視聴者が考えるための材料をありのままに提供することよりも、自分たちの主義・主張に
都合のいいことだけ熱心に伝えている。前川氏の意見と加戸氏らの反論のどちらに軍配を上げるかは本来、情報の受け手自身が選ぶべき話である。そんな当たり前のことが、前川氏の見解だけしか報じないメディアによって妨害されている。

 今回、テレビ報道の偏向を調べた一般社団法人日本平和学研究所の理事長で文芸評論家の
小川榮太郎氏は、筆者も同席したインターネットの「言論テレビ」番組(4日放送)で、こう指摘していた。

 「報道機関の社会における存在意義は、報道による情報を基に
国民が判断する(という)民主主義の根幹を担っていることだ。その情報がこんなに極端な虚報に彩られ、何カ月も是正されないとなれば、これはデモクラシーそのものが否定、毀損(きそん)されていると言っても過言ではない」

 マスメディアは今、率先して民主主義の根幹を壊している。そして、安易な
「報道しない自由」の行使によって、自らの存在意義も失おうとしている。(論説委員兼政治部編集委員)
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 この意見はもっともです。多くの人が同感し、異論を唱える人は少ないと思います。しかし朝日新聞、マスコミけしからんのはこの問題に限らないし、また今に始まったことでもありません。数十年前から、多くの人が、様々な問題が起きる度に、繰り返し指摘してきたところです。

 それにもかかわらず、なぜこの問題は
一向に改善しないのでしょうか。いや、改善しないどころか、彼等の偏向報道(情報操作)が益々悪質になってきたのはなぜなのでしょうか。いろいろあると思いますが、一つにはこの問題については、なぜか議論が「けしからん」で止まってしまい、「一体なぜなのか」、「どうしたら改善できるのか」という議論に発展することがないからだと思います。

 最近になってようやく、文芸評論家の小川榮太郎氏が中心になって、放送法の切り口から議論が進められるようになりましたが、新聞については全く議論が進んでおりません。
 事実、この記事を書いた産経新聞の論説委員である阿比留瑠比氏の意見も、
「けしからん」の段階止まりで、そこから先の「なぜなのか」、「どうしたら良いのか」に発展していません。

 今後は次のような切り口で放送業界、新聞業界の問題点を追及していくことが必要であると思います。

〈1〉放送業界
 放送業者(報道機関ではありません免許行政の下にありますが、事は直接言論の自由に関わる問題で有り、免許は国民万人に公平に機会が確保されている必要があると思います。

 しかるに現状の免許は、特定の業者が半永久的に免許を受けていて、他の国民は免許を受ける機会がゼロであるというものですが、これは正しい免許行政のあり方と言えるでしょうか。
 特に地上波テレビBSテレビは同じ業者が
重複して免許を受けていますが、これでは実質的に彼等を特権階級にしているに等しく、甚だしい不公平ではないでしょうか。

 しかもBSテレビ
ショッピングと20〜30年前の番組の再放送韓ドラばかりで、見るべき番組がなく、おしなべて極端な低視聴率であり、彼等地上波テレビ放送業者がBSテレビの免許を受けているのは、単に同業者が増えるのを阻むために、免許を押さえているだけで番組制作の意欲は微塵も感じられません。貴重な電波の全くの無駄遣いです。

 言論の自由は特定業者の無制限の自由ではなく、全国民の自由でなければなりません。全国民の平等を確保するために、一定の制約が必要であれば、それは平等に甘受すべきです。
既得権者のみの無制限の自由は本当の自由ではなく、反って自由の制約として排除されるべきです。「自由」よりも「公平」が何より大事です。

 免許を与えるに際しては、
「公平」を第一に考えるべきです。言論の自由に関わる問題で有り、これが最も重要な基準です。インターネットのように希望する者すべてが発信することが出来ず、放送局の数に制約があるのであれば、一定の(最低限必要な)要件を満たす者に対して、抽選、交代制を採用すべきです。
 また、免許の更新に際しては、
視聴率の高低を考慮に入れることも有効だと思います。


〈2〉宅配紙新聞業界
 
独占禁止法の観点から自由競争を阻害している業界の悪習を除去し、公正な自由競争市場を実現する事が必要です。

◎ まず取り上げるべきは巨大新聞メーカー(報道機関ではありません)による、
零細小売店支配優越的な地位を利用した不公正な商取引慣行の根絶です。
 不公正な商取引の現状
 1.
再販制度による指定価格を小売店に強制。
 2.
押し紙と言われる商品の押しつけ販売。
 3.他紙との
併売を認めない排他的専売店の強要。かつての家電業界の系列販売店と同じで著しく消費者の利益を損なう。
 4.メーカーの干渉により
経営規模の拡大が進まず、零細経営が近代化を阻害。旧態依然の新聞宅配業。郵便、宅配業との兼営が進まず。

◎ ではどうしたら良いのか
 自由で公正な紙新聞の流通市場を育成・実現する為には、メーカーに対する販売店の体力強化という観点から、新聞
販売店の統廃合を進める。企業規模が拡大すれば、従業員の交代制も可能になり、「休刊日」も廃止可能になる。
 専売店を排除するために、
公正取引の観点から専売を禁止併売店を増やす。
 新聞メーカーが「言論の自由云々」と言い出したら、「自由で公正で、
新規参入を可能とする健全な新聞流通市場の育成こそが、国民の言論の自由を守る。守るべきは“新聞業者"の自由では無く、国民の自由である」事を明確にして反論する。

 3紙以上を取り扱い、一番多いメーカーの商品比率が50%以下、3番目のメーカーの商品が10%以上の販売店を、
標準併売店として、税務上などのメリットを与えて普及・育成を図る。

 
宅配紙新聞は、情報伝達の速度、量、コストなどあらゆる面でデジタル新聞に劣るので、政府は新聞のデジタル化を推進すべき。その普及の為に、高齢者でも利用できるように高額の補助金付きで、新聞購読用の大型(B4版)のタブレットの普及促進を図る。デジタル新聞が普及すれば新聞市場に健全な競争環境が実現し、宅配紙新聞は消滅しメーカーによる流通支配の問題も消滅する。

 宅配紙新聞は
印刷、輸送、宅配コストが全体に占める割合が高く、デジタル化は低価格化を実現する。報道のスピードアップ、報道量の充実と並んで、消費者の利益は大きい。

3〉放送・宅配紙新聞共通
 閉鎖的
記者クラブは言論の自由を損なうだけでなく、業界の談合、取材対象である官庁との
「官民癒着」の温床となっているため、直ちに廃止する。
 記者会見は
会見者が主催し、業界側の主催としない。

 記者会見は会見者が記者の質問に答えるという形式で、会見者が国民に説明する場とし、
記者との議論の場ではないことを明確にする。主催者の制止を無視する記者には退場を命じる。

 
官報のデジタル化を皮切りに、総合的な政府広報サイトを創設し、業界の寡占・談合体質に一石を投じる。
 同時に、すべての情報を最初に記者会見で発表する、
“記者会見ファースト”を止め、最初に発表するのは
デジタル版の政府広報(旧官報)とする。近年、宅配紙新聞を購読しない若者が増えており、
情報伝達の不公平をなくす。

平成29年9月28日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ


(平成30年5月1日 追記)

 
放送事業全体の問題として、今なすべきことは「免許行政」の根本的な見直しです。安倍政権が「放送法」の抜本的な改正を検討していると報じられ、放送業者(報道機関ではありません)が早くも既得権死守の動きを見せていますが、これも同一線上の動きではないかと思っています。

 私は、次のような改革を考えます。
 放送免許は、最低限必要な
応募資格を明示して希望者を公募する。
 資格要件を満たす
すべての応募者に公平・平等な機会を与える。
 要件を満たすすべての応募者を公平・平等に扱う2つの方法
  1.抽選を採用する。
  2.
曜日別・時間帯別免許を採用する。
 2.の方法を採用するために放送会社を、
ハード面を担う放送設備・技術会社と、ソフト面の番組作りを担う番組作成・編成会社に分離する。
 こうすれば例えば地デジとBSを合わせれば、現在地デジ7チャンネル、BS8チャンネル、合計15チャンネルあるが、これを
曜日別に細分化して別業者に免許を与えれば、最大(7+8)×7=105の業者に免許を与えることが可能になります。
 これは
言論の自由に資するところが大であると思います。