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朝日新聞に見る偏向記事の手口

 自民党と自由党の間で、自衛隊の国連平和維持軍(PKF)への参加、多国籍軍への後方支援などの、安全保障問題をめぐる政策協議の合意が成立し、連立政権が発足しました。これを受けて朝日新聞は1月14日の夕刊で

 強まる「安保」 市民ら危機感
 自衛官 「議論が足りぬ」
 基地の町 軍事目標化を心配


と言う大見出しの記事が掲載されました。
 記事の中では自衛隊、民間協力、一般市民の三つに分けて次のような、両党に批判的な意見が紹介されています。

自衛隊
「『連立の取引条件にする内容ではない。もっと腰を据えて議論すべきだ』、国連平和維持活動に参加したことがある現職自衛官が話した」
別の自衛官も『反政府勢力などから襲撃されて交戦する危険は高くなる』と不安を漏らした」
民間協力
「ボスニア・ヘルツェゴビナで、選挙監理委員を務めた大阪大院生の饗場和彦さん(38)は、『国民的議論が後回しで、連立の手段とされたのは本末転倒だ』と話した」
一般市民
「舞鶴市で海上自衛隊の基地を監視する市民団体の須永安朗代表(73)は、『新ガイドラインで日本が後方支援を担うことになれば、舞鶴は前線基地になり、格好の軍事目標になる』と危機感を隠さない」
「『新ガイドラインとその立法化に反対する高知県民連絡会』の栗原透・代表世話人(71)は、『自自連立によって、地方自治に対する不当な介入が加速される恐れがある』と警戒している」

 結局、ここで紹介されている意見は自衛官二人、大学院生1人、団体代表2人、の合計5人の意見に過ぎません。自衛官は全国で24万人、国連平和維持活動に参加した隊員だけでも数千人はいるはずです。多数の自衛官にインタビューした結果これらの意見が多かったので、代表的な意見、典型的な意見として、この二人の意見を紹介するというなら分かりますが、そうではなく特定の一人二人の意見を紹介するなら、なぜその人物を選んだかを明らかにする必要があります。恣意的に選んだ二人の自衛官の意見を紹介しても、それは自衛官の意見を紹介したことにはなりません。それにも関わらず、自衛官の意見として報じることは、読者にその意見が自衛官の多数意見、あるいは典型的な意見であると言う誤解を与えます。大学院生、一般市民についても同様です。一般市民に至っては1億人以上いるわけで、朝日新聞は多数の“一般市民”中からどうやってこの2人を選んだのでしょうか。彼らは市民ではあっても市民の代表ではありません。また、政治活動をしている市民団体の代表者は果たして“一般市民”と言えるでしょうか。
 特に選んだ根拠がなければ、この人達の意見はあくまで1億2000万国民の中の5人の意見に過ぎず、この5人の意見だけを新聞紙面に大きく取り上げる理由がありません。残りの1億1999万9995人の意見はなぜ無視するのでしょうか。恣意的に選んだ“市民”の意見だけを紹介して、あたかも市民(国民)の多数意見であるかのように報道する、これが朝日新聞の偏向報道の常套手段です。

平成11年1月30日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ