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少子化対策破綻の現実を突きつけられても、誤りを認めたくないので思考回路のスイッチを切った読売新聞の鷹尾洋樹記者 −改めて白日の下に晒される、言論の自由を欠く日本の社会−
6月6日の読売新聞は、「19年出生率1・36、4年連続減…人口自然減は初の50万人超」と言う見出しで、次のように報じていました。
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19年出生率1・36、4年連続減…人口自然減は初の50万人超
2020.06.06 07.06
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出生最少86・5万人
厚生労働省は5日、2019年の人口動態統計(概数)を発表した。1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す合計特殊出生率は1・36と4年連続で低下した。死亡数から出生数を差し引いた自然減は、51万5864人と初めて50万人を超えて過去最大の減少幅となり、人口減少の加速化が鮮明になった。
合計特殊出生率は15年の1・45から毎年0・01ポイントずつ低下してきたが、今回は0・06ポイント減と大きく下げ、8年ぶりに1・4を割り込んだ。母親の5歳ごとの年代別でも、全ての年代で前年を下回った。都道府県別では、沖縄県の1・82が最高だったのに対し、最低は東京都の1・15だった。
出生数は86万5234人(前年比5万3166人減)と大きく減り、1899年の統計開始以降で最少を更新した。86万人台への到達は、2017年時点の国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計)よりも2年早い。
厚労省は背景について、若い女性の減少や未婚・晩婚の増加に加え、翌年に改元を控えた18年は、婚姻件数が前年比3・4%減で戦後最少に落ちこんだ影響もあると分析している。改元があった19年には、「令和婚」効果からか、婚姻件数が59万8965件(同1万2484件増)と7年ぶりに増加したため、20年は出生数の落ち込みが緩和される可能性もあるという。
死亡数は138万1098人(同1万8628人増)で、戦後最多だった。この結果、自然減も前年から7万1794人拡大し、鳥取県人口(約55万人)にほぼ匹敵する規模の減少となった。人口の自然増減数は05年に初めてマイナスに転じ、07年からは減少幅が毎年広がっている。厚労省は「出生数の減少と高齢化社会の進行で、自然減の拡大傾向は今後も続く」とみている。
菅官房長官は5日の記者会見で、「少子化の進展は、国の社会経済の根幹を揺るがしかねない問題だ」と述べ、対策を急ぐ考えを強調した。
少子化とそれに伴う人口減に歯止めがかからないことを受け、政府は5月に閣議決定した「少子化社会対策大綱」で、希望がかなった場合の子どもの数を示す「希望出生率1・8」を、25年までに達成するとの数値目標を明記した。7月にとりまとめる「全世代型社会保障検討会議」の中間報告でも、少子化対策を柱の一つに位置づける方針だ。
【解説】官民 強い危機感で対策を
今回の人口動態統計で浮き彫りになったのは、政府が5年後の目標に掲げる「希望出生率1・8」達成への道のりの険しさだ。 政府はこれまでも、働き方改革や幼児教育・保育の無償化など、子育て支援に取り組んできた。それでも出生数が下げ止まるどころか、減少幅は大きく広がった。
新型コロナウイルスの影響で経済情勢が悪化すれば、少子化がさらに加速する懸念もある。生活不安の増大で、子どもを養育する余裕がなくなるからだ。 政府の少子化社会対策大綱は、少子化の背景について「個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている」としている。
若い夫婦の経済支援や、仕事と育児を両立させやすい職場環境づくりなど、官民が強い危機感を持って対策を講じていくしかない。(政治部 鷹尾洋樹)
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ここでは、政治部の鷹尾洋樹記者の「解説」に的を絞って論じたいと思います。
(茶色の字は 記事 黒色の字は 安藤の意見)
【解説】官民 強い危機感で対策を
今回の人口動態統計で浮き彫りになったのは、政府が5年後の目標に掲げる「希望出生率1・8」達成への道のりの険しさだ。
希望出生率とは、現状の婚姻率(未婚率)、夫婦の希望する子供の数などを元に算出したもので、要するに結婚し子供を持ちたいと望む国民のすべての希望が実現すると、計算上の出生率が1.8になるから、それを目標にすると言うものですが、国の人口の現状維持のためには最低でも出生率2.07が必要とされており、1.8では現在の人口を維持できず減少が続きます。
安倍総理は、現状の「少子化」を「国難」と評したと報じられていましたが、そもそも個人の希望を集計しただけの、人口維持には不足する数値を目標値にして国の「大綱」を作る意味があるとは思えません。
意味があるとすれば、官僚等が長年の失敗を取り繕うために、低い目標値を作って、国民の目をごまかすことしか考えられません。しかるにそれさえも「険しい道のり」というのでは、話になりません。
政府はこれまでも、働き方改革や幼児教育・保育の無償化など、子育て支援に取り組んできた。それでも出生数が下げ止まるどころか、減少幅は大きく広がった。
これほど長期間にわたり明白な大失策が放置された例は他にありません。これはこの問題に関与してきた担当官僚、学者、記者の大半が女性だったからでは無いでしょうか。女性に甘かったと言えないでしょうか。
新型コロナウイルスの影響で経済情勢が悪化すれば、少子化がさらに加速する懸念もある。生活不安の増大で、子どもを養育する余裕がなくなるからだ。
コロナウィルスの話は分けて考えるべきです。話を逸らせるべきではありません。
政府の少子化社会対策大綱は、少子化の背景について「個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている」としている。
なぜ少子化の“背景”を論じるのでしょうか。把握の必要があるのは“背景”では無く“原因”では無いのでしょうか。少子化の「原因」を把握することが少子化対策の最初の一歩のはずです。更に“要因”と言っていますが、“背景”と“要因”とは、どこがどう違うのでしょうか。論理的な思考回路になっていません。
彼らが原因を直視しようとせず話をごまかすのは、彼らは“原因”に薄々感づいていて、それが自分たちの主張してきたことの否定に繋がると恐れているからでは無いでしょうか。
出生率、未婚率(婚姻率)などのグラフを見れば出生率低下の原因は未婚の増加である事は、一目瞭然です。これは、過去のエンゼルプラン、少子化社会対策大綱等でも認識されてきたことです。
しかるに、そこから先へ、なぜ未婚が増えたかには踏み込むことを避け、「背景」とか「要因」とかに話をすり替え、ごまかし、本当に必要な対策を避けてきた事が、今日の無残な失敗を招いた原因です。
今まで散々自信を持って、効果の無い対策を実施していながら、この期に及んで“様々、複雑、絡み合って”の3語で、議論(責任)から逃れようとする姿は大変醜い限りです。
若い夫婦の経済支援や、仕事と育児を両立させやすい職場環境づくりなど、官民が強い危機感を持って対策を講じていくしかない。(政治部 鷹尾洋樹)
この段になっても、なお、今までと同じ対策しか口にすることが無いと言う人間に、もはや存在価値はありません。「いくしかない」という“投げやり”な言い草からは、もはややる気も考える気も感じられません。
自分たち(官・学・マスコミ)だけで、“民”を無視して対策を決定・実行したくせに、大失敗をした挙げ句に、こう言う時だけ“官民”と言って、“民”に責任を転嫁する卑劣さ、図々しさには怒りを禁じ得ません。今頃「危機感」とは遅すぎます。
彼の言っていることは、誤りを認めたくないので“思考回路”のスイッチを切ったと言うことです。スイッチを切った人間はもう要りません。
本来なら、このような無能でやる気の無い記者は、社内に存在する余地はないはずです。そういう記者が平気で存在する新聞社は、競争に敗れて市場から消えるはずです。
それにも関わらず、そういう新聞社・新聞・記者が存在し続けるのは、日本の新聞市場が健全な自由競争の市場で無いことを物語っていると思います。
令和2年6月11日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ