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新聞協会の「7割の人は新聞は信頼できると回答した」とする世論調査は“世論操作”であり、反対に新聞を信頼する人は24.5%に止まることを示している。

 8月8日の読売新聞は、「
新聞『信頼できる』7割…新聞協会調査 全メディアでトップ」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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新聞「信頼できる」7割…新聞協会調査 全メディアでトップ
2020/08/08 05:00  読売
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 日本新聞協会は6日、新聞やテレビなどが提供する
情報の信頼度に関する調査結果を発表した。新聞を「信頼できる」と答えた人は約7割に上り、調査対象となった全てのメディアの中でトップだった。


赤線は安藤

 調査は、新型コロナウイルスに関して
不確かな情報が氾濫していることなどを受け実施。5月26~27日にインターネットを通じて行い、全国の15~79歳の男女計1243人が回答した。

 調査では、新聞やテレビなど13のメディアについて、それぞれ
信頼度などを尋ねた。「信頼できる」「やや信頼できる」と答えた人の割合は、最も多かった新聞で69・5%。テレビが66・8%、ラジオが56・7%と続いた。一方、ツイッターやフェイスブックなどのSNSは15・4%にとどまった。

 また、インターネットやSNSで読んだ記事について、46・9%の人が提供元を「確認する」「たいてい確認する」と答えた。
提供元の信頼度でも、「信頼できる」「やや信頼できる」と答えた人の割合が最も多かったのは新聞社(56・5%)で、テレビ(48・9%)が2位だった。
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 この調査ではいくつか不可解なことがあります。一つは回答者が1,243人であるとしていますが、単に
「インターネットを通じて行い」と書いてあるだけで、どのような(何人の)人達を対象にして(あるいは無作為抽出で)実施したかが書かれてません。単に特定のホームページ上で実視しただけなのであれば、多くの人はそのホームページの存在すら知らないでしょうし、反対にそのホームページの愛読者が多数回答を寄せることは目に見えています。従って回答者に偏りがなく、結果を無条件に受け入れて良いものかどうか判断出来ません。

 次に調査結果を集計したグラフを見ると、回答の
選択肢が「信頼できる」と、「やや信頼できる」の二つしかないように見えますが、どのメディアに対する回答も合計が100%に満たない数字なので、それ以外の回答の選択肢、例えば信頼できない全く信頼できない、「分からない」、「その他」などの回答選択肢があったのか、なかったのか、説明がなく不可解と言う事です。

 更に不思議なのが「やや信頼できる」という回答の意味です。「やや信頼できる」という言葉自体があまり使われない言葉遣いですが、質問作成者は
“やや”の意味を“少し”であるとして、「“少し”信頼できる」とし、「信頼できる」の範疇に含めたようですが、言葉の解釈・意味づけとしておかしいだけでなく、強引すぎると思います。

 “
やや信頼できる”とは ≓ 少しだけ信頼できる(少ししか信頼できない・疑わしい)であり、信頼できるか、できないかで区分すれば、明らかに“信頼できない”に分類される概念だと思います。特にこの二つしか選択肢を用意しないで、回答を求めたのであれば、日頃新聞に対して不信感を抱いていた人は、「やや信頼できる」に丸を付けるしかありません。

 このように考えると“信頼できる”と“やや信頼できる”の
2語のみを選択肢として、選択・回答を求め、“やや信頼できる”を“信頼できる”に含めてカウントして結論を導き出したのは、回答者を欺くものであり、基本的な言葉遣いの解釈の間違いに止まらない、質問時と集計時に異なる基準を適用した「ダブル・スタンダード」であり、意図的な世論操作と言えます。このいい加減な調査から、何かを読み取るとしたら、「新聞を信頼している人はわずか24.5%」しかありません。

 日本のマスメディアの問題は、報じていることに
がある(だから信頼できない)と言う単純な問題ではないのです。彼らも一定の“偏差値”を持って入社したわけですから、すぐばれるように嘘は書きません。彼らへの疑惑は、報道すべき事実を隠しているのではないかという問題なのです。例えば相互に関係のある甲・乙の二つの問題があるにも拘わらず、新聞は甲だけを報じて(論じて)乙を隠し、読者を誤った判断に導いていると言う問題なのです。

 これを今回の調査に当てはめれば“甲”の報道そのものは決して“虚偽”ではありませんが、
“乙”を隠せば、全体として考えれば、“虚偽”を報道していることと変わりません。却って手が込んでいて悪質と言うべきです。

 それにも拘わらず、新聞業界の人達は、批判に対抗するかのようにしばしば、
この種の世論調査を実施して、「読者は新聞記事に書かれていることが一番信用できると評価している」と反論するのが常ですが、今や、その世論調査そのものが悪質な世論操作と化しています。

令和2年8月22日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ